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✞ 4話 頼りない先生と怒鳴る先生 ✞

2023/02/13
文字数:約832文字
 3組担任の新卒女先生は完全に、甘く見られていた。
 生徒がうるさくて授業にならない事の方が多くなった。

 やがて、隣のクラスの男先生が怒鳴りこんでくるようになった。

「うるさい!!」

 その一言でシーンと教室が静まり返る。
「お前らのクラスだけだぞ。こんなにうるさいのは。静かにしろ!」

 と言うような短めの説教を付けた後に出て行く。
 静かになるのは一瞬で、男先生が出て行ってしばらくすると、再びうるさくなる。
 怒鳴り声におびえる様な子供は、最初から騒いでいない。
 先生の授業の声なんて聞こえない事はしょっちゅうだった。
 まじめな子達は教科書を開いて自習状態である。
 うるさい子達は周りとのお しゃべりにふけっている。

 やがて……1組の学年主任の先生がやってきた。(1組担任と学年主任を兼ねていた)
 同じように「静かにしなさい!」と怒鳴って入ってくる。
 男先生と違うのは説教の時間だ。
 こんこんと授業の大切さや、今はおしゃべりをする時間ではない事や、小学生になったのだからしっかりしなさい……みたいなことを話していた。

 最後に「あなたも、もっとしっかりして頂戴」と言うような事を、新卒先生に言って出て行った。

 これもまたしばらくすると、いつもの騒ぎに戻った。


 何がきっかけだったか忘れた。
 ある日、先生の心がぷっつりとキレた。

「もう、知りません!!」と怒鳴り出席簿を教卓に たたきつけて、教室を出て行った。
 一瞬シーンとした教室は、二つに割れた。
 いつものように騒ぎ出すグループと、「先生を探しに行こう」と立ち上がったグループだ。
 少数は何もせずに教科書を開いていた。
 私も先生は気になったけれども、探しに行く気にはなれなかった。
 先生はトイレで泣いていたという。

 私たちが6年になった時に先生は、この時探しに来てくれて嬉しかったと言っていた。

 先生はトイレで泣いていたのが自分だけだと思っているのだろうか?
 他にも泣いていた子はいたけれど、先生の視界には、入っていなかったのかもしれない。




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