2020年 5月のアーカイブ
✞ 9話 依存 ✞

✞ 9話 依存 ✞

文字数:約1373文字  ゴールデンウィークになると、私は守り人さんを避けるようになった。  アプリに『ログイン非表示』の機能が搭載されたからだ。  こちらからは、守り人さんがログインをしていることが確認できたが、向こうからは見えない。  タナトス:謝るべき?ログインしてたけ...

✞ 8話 怒り ✞

✞ 8話 怒り ✞

文字数:約964文字  オフ会が終わって、最初のチャットで私は聞いた。  タナトス:……質問。  守り人さんの私への評価は?  守り人:…難しいね。言葉を 碌 ( ろく ) に交わせてないから。悪い意味じゃ無くてね。      ただ、タナさへの評価は割と高い場所に在ると思って。...

✞ 7話 初対面 ✞

✞ 7話 初対面 ✞

文字数:約1400文字  さて、会う日にちが決まって時間も場所も決まった。  守り人さんには、伝えて後は『目印は何にするか』を伝える。  私は、『 梟 ( ふくろう ) のリュック』に『 蛙 ( かえる ) のマスコット』を付けている。服はチェックのワンピースと伝えた。  しか...

✞ 6話 仕事 ✞

✞ 6話 仕事 ✞

文字数:約862文字  全ての不満が、『月のモノ』のせいにされてしまう。  守り人さんにとって、私が不機嫌で要望を伝える日は『ツキの日』だからで片づけられた。  不機嫌な言葉が、『本音』であることは脇へ押しやられ、『可愛いタナさ』の言葉だけが守り人さんの耳に残る。  守り人さ...

✞ 5話 見捨てて ✞

✞ 5話 見捨てて ✞

文字数:約722文字  再び、えすえむ話が続いて、私はとうとう「見捨てて」と伝えた。  それはとても明るい感じで、怒りも悲壮感もない話から始まった。  守り人:タナさが「して欲しい」と思う事を云えば良い。  タナトス:見捨てて♪  守り人:そうされて、耐えられる?  タナト...

✞ 4話 自傷行為 ✞

✞ 4話 自傷行為 ✞

文字数:約1128文字  毎日、毎日、非日常話が続くと、私の不安定な心が、益々不安定になった。  えすえむ話の終わり方を考えるが、どこをどうしてもそこに戻されてしまう。  私の中で、えすえむ話に切り上げたい気分半分、乗りたい気分半分というのも問題だった。  えすえむ話に乗りたい...

✞ 3話 えすえむ ✞

✞ 3話 えすえむ ✞

文字数:約889文字  会長様とはその後、チャットやメールをしなくなった。  その分、守り人さんへの依存が高まった。  ある日、うちの弟は虐めたくなるほど可愛い子という話になった。  守り人:タナさも、Sッ気が強い方?  タナトス:ん~?どっちが、どっちだっけ。 なんか、未だ...

✞ 2話 コンサート ✞

✞ 2話 コンサート ✞

文字数:約571文字  仕事をやめると、ほぼ毎日チャットをするようになった。  1・2時間ほどがあっという間に過ぎて、寝る時間になる。  そんな日が続いた。  守り人さんとの会話は、ちょっとした日常の事や、ビジネスマナーや、最近の若者は……みたいな話だった。  守り人さんの年齢...

✞ 1話 声のホームページ ✞

✞ 1話 声のホームページ ✞

文字数:約666 文字  学生の頃、「声遊び」にはまっていた。  他の人のネットラジオを聞いたり、声のホームページを巡ったりもしていた。  そのうち、とある声のページを見つけて、気に入った。  そのホームページは、初心者さんへといったコラムもあって、読み応えがあった。  声も毎...

✞ 0話 懺悔 ✞

✞ 0話 懺悔 ✞

文字数:約270文字  後悔はしない。  人を好きになった事を、人を 弄 ( もてあそ ) んだ事を、人を傷つけた事を。  私は私が思うほど、『いい人』にはなれなかった。  最初から私は、守り人さんが好きなふりをした。  好きになった人には、永遠に思いを打ち明けることはない。...

✞ 物語の前に ✞

✞ 物語の前に ✞

文字数:約302文字  トウツキは私の過去物語。  トオツキの続きですが、 呼び名 ( ハンドルネーム ) は「ノア」に変わります。  インターネットでつながった人が中心のお話しになるので、  「カタチ マル」も「カイヌシ」も、あまり出てきません。  トオツキに続いてこちらも基...

✞ ☆番外☆ 成人式 ✞

✞ ☆番外☆ 成人式 ✞

文字数:約360文字  学校があったので、地元にいなかったので、成人式には出席しなかった。  後になって、母から 「何か届いていたよ」  と渡されたのは、成人式に欠席した人に届く記念品だった。  開けると「金魚草の種」と「コンドーム」が入っていた。  種は、 撒 ( ま ) ...

✞ ☆番外☆ 文通相手 ✞

✞ ☆番外☆ 文通相手 ✞

文字数:約426文字  専門学校に通っていたころ、小学校からの文通相手に実際に会った。  会ったのはこの時、一度きりだった。  彼女の大学に潜り込んで、講義を受けさせてもらった。  大学ってこんな場所なんだとわくわくした。  その後、彼女がやるキリストの劇を見て、帰った。 「...

✞ ☆番外☆ 中国の人 ✞

✞ ☆番外☆ 中国の人 ✞

文字数:約440文字  専門学校時代、クラスメイトに中国の人がいた。  4人兄弟と聞いて驚いたが、日本で勉強をするくらいなのだから、お金のある家と言う事だった。  お金があれば、子供をいくら作っても大丈夫というからくりを聞いて、ますます、驚いた。 「どうして、みんな一緒に、食事...

✞ 16話 紙飛行機の向こう ✞

✞ 16話 紙飛行機の向こう ✞

文字数:約549 文字  私は仕事をやめた。  辞職理由は『病気』だった。  病院には一切行っていない。書類上の理由が『病気』なことに笑った。  会社に行っていた頃、たくさん折った紙飛行機は部屋を埋め尽くした。  紙飛行機を集めた。  会社から持って来た個人情報満載の書類も集め...

✞ 15話 こたみちゃん ✞

✞ 15話 こたみちゃん ✞

文字数:約1047文字  昼間に会えなかったので、こたみちゃんは、「ちょっと遅くなってもいいなら家に行くけど?」と言ってきた。  それで良いよと返した。  こたみちゃんが私の家に来たのは、小学生の時に一度きりだった。その一度の記憶を元に、真っ暗な中やってきた。  ……いいよと言...

✞ 14話 家族 ✞

✞ 14話 家族 ✞

文字数:約855文字  家族にもバレた。  母は「死にたかったんでしょ!!一緒に死んでやる」と、私に向かって叫んだ。  自傷を知った親が、どんな対応をするものなのかは知らない。 「私なんかいらない」という母を、私は子供の頃から慰めてきた。 「あなたが死にそうになっても助けない。...

✞ 13話 五月病 ✞

✞ 13話 五月病 ✞

文字数:約907文字  会社へは電車で行く事もある。  その日は電車に乗っていた。 「あれ?カイヌシ??」  見ると、こたみちゃんだった。  高校卒業以降は連絡を一切取っていない。  久しぶりなこたみちゃんが、そこにいた。 「今、何しているの?私はね」  と近況の交換をして、...

✞ 12話 猫が噛む ✞

✞ 12話 猫が噛む ✞

文字数:約807文字   あげはちゃん ( 父方従姉妹 ) が、私と同じように試験を受けて合格をした。  あげはちゃんに最後に会ったのは、高校生の頃だった。数年ぶりに会ったあげはちゃんは、少しだけ落ち着いていた。  夜遊びをして、金髪ピアスだったあげはちゃんは、夜遊びをしない金...

✞ 11話 旅人さんと花見 ✞

✞ 11話 旅人さんと花見 ✞

文字数:約925文字  ある日の会社帰り。電車で帰るために駅に向かって歩いていた。  突然、後ろから「すみません」と声をかけられた。  振り返るとリュックを背負った男性が、いた。 「駅はどこですか?」 「向こうですけど……。私も今から行くので一緒に行きましょうか?」  私は自分...

✞ 10話 保険の仕事 ✞

✞ 10話 保険の仕事 ✞

文字数:約1123文字  年が変わる頃、父が言った。 「保険の仕事をしないか?」  何度も書いてきたように、私はお 喋 ( しゃべ ) りが苦手。  母は保険の仕事を即座に反対した。  母の反対は正しいが、恐らくそれは父から見たら過保護に見えたのだろうと思う。 「大丈夫だから...

✞ 9話 自動車免許と工場 ✞

✞ 9話 自動車免許と工場 ✞

文字数:約743文字  卒業した私は実家に戻った。  2年間遊んだ私は、そこで「生きていけない自分」を自覚した。  就職した方が良いんだろうなと言う漠然とした感覚と、  車がないのに就職が出来るのか?という不安の間で、私は無職の日々を送った。  免許だけは学生時代に取った。 ...

✞ 8話 研修旅行と卒業 ✞

✞ 8話 研修旅行と卒業 ✞

文字数:約1419文字  全てが 億劫 ( おっくう ) になりながらも、課題は辛うじてこなした。  評価は最低、とりあえず提出したという程度の物しか出せなかった。  研修旅行もあったが、これもまた一人で行動しようと思った。  ……が、海外でずっと女一人行動はヤバいと思い直し、...

✞ 7話 一人の空間 ✞

✞ 7話 一人の空間 ✞

文字数:約817文字  寮生活も半年以上 経 ( た ) ったころ。いろんなものが限界に達してきた。  まず大きいのは、ずっと集団生活で気が休まる場所が、ないということだった。  部屋は一人部屋なので、安心できる……わけではない。  壁は薄いので、廊下の音も隣の音も筒抜け。隣は...

✞ 6話 アルバイト ✞

✞ 6話 アルバイト ✞

文字数:約823文字  赤痢の騒ぎも忘れた頃に、アルバイトをすることを考えた。  働いた事がないという事が、いけない事のように思えたからだ。  私は求人情報で見つけた飲食店へ応募して、受かった。  が、一日で自分には合わない事を悟った。  失敗が多すぎて、迷惑もかけたので、使...

✞ 5話 赤痢収束 ✞

✞ 5話 赤痢収束 ✞

文字数:約884文字  次の日、普通に学校に行った。先生は何も言わなかった。  ただ、検便が全く出せなかった。  緊張とストレスと、食べる量が極端に減ってしまったせいで、出てこなかったのだ。  さらに次の日には、寮母さんから便秘に効くという漢方を 貰 ( もら ) って飲んだ。...

✞ 4話 家族からの電話 ✞

✞ 4話 家族からの電話 ✞

文字数:約1012文字  当時の私には、どう判断したらいいのか分からず、先生たちの話はただの差別にしか聞こえなかった。   欝々 ( うつうつ ) とした気分で寮に帰る気分にもならず、日が落ちるまで、近所の神社で座って過ごした。  ただでさえ、寮の中は赤痢の話題しかなくて落ち...

✞ 3話 赤痢発生 ✞

✞ 3話 赤痢発生 ✞

文字数:約1246文字  寮での生活もそれなりに落ち着いてきたころ、赤痢が寮で出たという知らせが張り出された。  赤痢とは主に下痢・発熱などの症状が出る感染症。寮生の数人が発病し、隔離された。  即座に、食事がお弁当へと切り替えられて、消毒液がトイレや洗面台・食堂や玄関に置かれ...

✞ 2話 家族との関わり ✞

✞ 2話 家族との関わり ✞

文字数:約600文字  寮とはいえ、初めての一人暮らし。家族が恋しくなって……ない。  最初は不安に思えたことも、パソコンとインターネットがあれば寂しさも不安も消え去った。  ただ一つだけ、ほっちゃんが後ろに居ない事が、不思議な感じだった。  ほっちゃんは私の一つ下なので、振...

✞ 1話 新しい土地と新しい世界 ✞

✞ 1話 新しい土地と新しい世界 ✞

文字数:約939 文字  県外の専門学校に入学した。  専門学校では寮に入った。  複数の学校の子が出入りする女子寮。男女混合の寮もあったけど、気分的に男がいるのは落ち着かないと思ったので、女子寮にした。  新しい土地、新しい人たちに囲まれて、新しい生活がスタートした。  ま...

✞ ☆番外☆ 受験準備 ✞

✞ ☆番外☆ 受験準備 ✞

文字数:約764文字  相談室に通うようになって、私は心地いい時間ができるようになった。  雑談をして、絵を描いて、言葉を書く。  落書きの為の小さなノートは常にポケットにあった。  そうしているうちに、受験の時期になり、「どこに行くの?」という話も出てくる。  進学情報誌も...