2020年 2月のアーカイブ
✞ 3話  先生いじめ ✞

✞ 3話  先生いじめ ✞

文字数:約879文字  いじめられっ子の物が壊されたり、無くなったりするたびに先生は 「そんな事をしてはいけません」  と丁寧に注意する。  先生は犯人探しをしないし、特定の人物への注意をしない人というレッテルがすぐに張られた。  いじめられっ子には自分を助けてくれない人として...

✞ 2話 お嬢様の教室 ✞

✞ 2話 お嬢様の教室 ✞

文字数:約1074文字  学校が始まった頃、私は小学校と言う場所が嫌いでも好きでもなかった。  クラスメイトに従姉妹のスズメちゃんがいて、私はスズメちゃんを通して近所の子達と関わるようになった。  同じ保育園だった「みーちゃん」や「しゅんちゃん」は、そのうちに話すようになった...

✞ 1話 小学校入学 ✞

✞ 1話 小学校入学 ✞

文字数:約810文字  初めての制服は、着方がわからなかった。  肩ひものついたスカートなんて着た事がなかった。  ブラウスにスカート。そしてジャケット。  みんなが同じ服を着ている。  保育園のようにスモックと体操服だけ同じではなくて、全部同じ。  そして、時間通りにみんな...

✞ 0話 小学校入学前の記憶 ✞

✞ 0話 小学校入学前の記憶 ✞

文字数:約986 文字  小さい頃は母親と手をつなぐものらしい。  私の両手にあったのは、いつも荷物だった。  母の手は小さな妹たちのもの。弟が生まれた後は弟のものだった。  私とつなぐ手は母にはなかった。  そんな中の唯一の『母と手をつないだ記憶』  それは保育園を終了し...

✞ ☆番外☆ 兄弟と先生の記憶 ✞

✞ ☆番外☆ 兄弟と先生の記憶 ✞

文字数:約1027文字   ☆番外☆ もう一人の兄弟の記憶  私には妹が二人、弟が一人いる。  けど、弟が生まれる前にもう一人、母のおなかの中に存在していた。  その日、母は山菜を取りに山に行った。  山菜を取に行って、生理の血がとまらない事に気が付いたらしい。  いつもよ...

✞ ☆番外☆ 女と言葉の記憶 ✞

✞ ☆番外☆ 女と言葉の記憶 ✞

文字数:約776文字    ☆番外☆ 女の記憶  弟は『唐突にやってきた、新たな兄弟』であると同時に 『私が女であり、要らないもの』という事を印象付ける存在でもあった。  ド田舎の待望の長男である。  周囲の喜びようは半端ではなかった。  誰もが 「やっと、男の子ね。お...

✞ 13話 人形の記憶2 ✞

✞ 13話 人形の記憶2 ✞

文字数:約969文字  もう一つ、おひなさまの話。  5歳の大掃除の時間だった。  みんながホウキやチリトリ、 雑巾 ( ぞうきん ) を手に掃除をしていた。  私は、言われた場所をやり終わって、次は何をしたらいいんだろう?早く掃除が終わらないかなと思っていた。  何かをし...

✞ 13話 人形の記憶1 ✞

✞ 13話 人形の記憶1 ✞

文字数:約864文字  保育園では、時々工作がある。  その時は、数人でグループを作って、菓子箱などでおひなさまを作った。  ひな壇を作って、子供の背丈くらいの高さにおひなさまを飾って、その下は女官などを飾った。  それぞれのグループが、個性的なおひなさまを作っていた。  おひな...

✞ 12話 妹の怪我の記憶 ✞

✞ 12話 妹の怪我の記憶 ✞

文字数:約1362文字   はーちゃん ( 下の妹 ) の手には傷跡が残っている。  その傷は私と、 ほっちゃん ( 上の妹 ) と、はーちゃんとで遊んでいる時に出来た。  いつもの遊び の、はずだった。  おままごとをしていた。  泥団子を作って、葉っぱのお皿に並べる。  ...

✞ 11話 弟の記憶 ✞

✞ 11話 弟の記憶 ✞

文字数:約1251文字  私が5歳の時、突然、弟が現れた。  よくドラマなんかでは「弟が出来るのよ」なんて、子供にいうシーンがあるが、そんなものは一切なかった。  私たちは何日間か祖母の家に預けられて、母に会えなかった。  会えたと思ったら、母の腕の中に弟が居た。  成人後に、...

✞ 10話 将来の夢の記憶 ✞

✞ 10話 将来の夢の記憶 ✞

文字数:約566文字  6歳になる事が嫌だった。  保育園のお誕生会をぼんやりと覚えている。  クラス別ではなくて、全員が遊戯室に集まってみんなでお祝いをするのだ。  6歳は『将来の夢』を発表しなくてはいけなかった。  それを見ていたから、6歳の誕生日会は来なくていいと思ってい...

✞ 9話 愛人の記憶 ✞

✞ 9話 愛人の記憶 ✞

文字数:約1169文字  私が小さい頃は、親の 喧嘩 ( けんか ) が絶えなかったように思えた。  思えただけで、実際の頻度はあまり覚えていない。  親はなるべく私たちに 喧嘩 ( けんか ) を見せないようにはしていた。  私たちが眠ってから、バトルをするのだ。   喧嘩 ...

✞ 8話 ライオンの記憶 ✞

✞ 8話 ライオンの記憶 ✞

文字数:約1029文字  その日は保育園のお祭りだった。  ほっちゃんと、母と、私でそのお祭りに行った。  ヨーヨーや輪投げなど、簡単なゲームがいくつかある程度の簡易な祭り。  手作りの品なども売られていた。  猫の飾りを買った事を覚えている。  その中で動物のメダルのようなも...

✞ 7話 母と鬼の記憶 ✞

✞ 7話 母と鬼の記憶 ✞

文字数:約688文字  幼いころ、山へドライブに行くと影を見た。  木々の間に影が揺らめくのが見えるのだ。  私はそれを  『お母さんだ』  ≪幻だ≫  【鬼だ】  と思った。  なぜ、それを「母」だと思い、「鬼」だと思ったのかよく覚えていない。  が、それらは同時に『幻』でも...

✞ 6話 お喋りの記憶 ✞

✞ 6話 お喋りの記憶 ✞

文字数:約1344文字  保育園では私は 喋 ( しゃべ ) った記憶がない。  記憶がないだけで、 喋 ( しゃべ ) った事があるかもしれないが、記憶する限り首ふりで答えていた。  例外は、 ほっちゃん ( 妹 ) だけだった。  とはいえ、ほっちゃんとは年が違う。もちろん...

✞ 5話 痛みの記憶2 ✞

✞ 5話 痛みの記憶2 ✞

文字数:約1097文字  『普通に、普通に……』  気が付かれたくなかったので、なるべく普通にするように頑張って歩こうとする。  が、足をつける度に痛みがズキンズキンと襲ってくる。  カバンまでは頑張って普通に歩けた……と思う。  頑張れたのはそこまでだった。  歩くたびに痛...

✞ 5話 痛みの記憶1 ✞

✞ 5話 痛みの記憶1 ✞

文字数:約1234文字  母はいつも何かに怒っていた。  私たちがコップのお茶やジュースをこぼすのは日常茶飯事。  そのたびに母が怒鳴る。時には手が出てくる。  そのうち母の手が飛び出す前に、雑巾を持ってくる事を覚えた。  私よりも、ほっちゃんの方が 叩 ( たた ) かれてい...

✞ 4話 保育園の話 ✞

✞ 4話 保育園の話 ✞

文字数:約1660文字  母は、私と ほっちゃん ( 上の妹 ) を保育園に入れた。  初めての保育園で私は大泣きしたらしい。  もちろん、覚えていない。  しかく先生が私を抱っこして、連れて行ってくれたそうだ。  私の記憶にある保育園の一日はこんなものだった。  毎朝ク...

✞ 3話 水の話 ✞

✞ 3話 水の話 ✞

文字数:約749文字  私たちをお風呂に入れるのは、父の役目だったらしい。  確かに気が付いたら、父と妹たちと一緒にお風呂に入っていた。  弟が生まれると、湯船が狭くなったので妹たちと入るようになった。  そして、最近になって知ったのだが、父はお風呂場でこんな事をしていたらしい...

✞ 2話 妹たちの誕生 ✞

✞ 2話 妹たちの誕生 ✞

文字数:約1099文字  さらに一年もしないうちに、また妊娠が判明した。  そしてその頃、新しい家を建てた。  1歳の私に、ゼロ歳の妹、お腹の中の子供を抱えて、母は引っ越しの荷物を運んだらしい。  父はと言えば、家を建てていた。  土地は 父の父 ( 祖父 ) から贈られたもの...

✞ 1話 私の誕生 ✞

✞ 1話 私の誕生 ✞

文字数:約1454文字  母は片方の卵巣を失って、子供を諦めた。  諦めてしばらくしたころ、妊娠が発覚した。  父と母が結婚して9年目の事だった。  それが、私。  母にとっては信じられない事だったらしい。  おなかの中にはエイリアンがいると思ったそうだ。  私が生まれたの...

✞ ☆番外☆  母子手帳 ✞

✞ ☆番外☆  母子手帳 ✞

文字数:約482文字  これを読んでいる方のほとんどの人は、自分の『母子手帳』があると思います。  もしかしたら、理由があって持っていない人もいるかもしれませんし、昔なので取得していない人もいるかもしれない。  父の母子手帳が出てきたので、見てみました。  書いてあるのはう...

✞ 6話 不妊治療の副作用 ✞

✞ 6話 不妊治療の副作用 ✞

文字数:約927文字  父と母は、結婚後に父の家に入った。  結婚した女に向けられる言葉と言えばこれしかないと思う。 『子供はまだなの?』  今、そんな事を言えばハラスメントになるが、母の時代は『ハラスメント』なんて言葉さえない。  悪意もなく「子供はまだなの?」という言葉...

✞ 5話 結婚反対 ✞

✞ 5話 結婚反対 ✞

文字数:約1033文字  父と母は結婚前に 同棲 ( どうせい ) をしていた。  引っ越し費用を母が出し、 箒 ( ほうき ) とチリトリ、一組の布団と食器ぐらいを買ったらしい。  洗濯機や冷蔵庫はない。もちろんテレビもクーラーもない。  洗濯は たらい ( ・・・ ) で行...

✞ 4話 デート事情 ✞

✞ 4話 デート事情 ✞

文字数:約903文字    **河原デート**  付き合うと言っても、父は当時学生でお金がない。  大抵はお金がかからない、ドライブがデートになっていたらしい。  そんなデートを繰り返していたある日。  河原に車を停めた。  そのまま、車の中でおしゃべりをしているとコンコン...

✞ 3話 両親の話 ✞

✞ 3話 両親の話 ✞

文字数:約928文字  ちちと ははの おはなし  父と母が出会ったのは、子供の頃だったらしい。  ただ、母はその事を覚えていない。  だから、これは父から聞いた話。  父と父の兄は少し年が離れていた。兄弟仲は良かったらしい。  ある日、父の兄の友達の家へと遊びに行った。 ...

✞ 2話 母の家の話 ✞

✞ 2話 母の家の話 ✞

文字数:約1380文字  ははの いえの おはなし  父の家と比べると、母の家はそれほど古くなかったようだ。   母の父 ( 私の祖父 ) が二代目だった。  いくつかの田んぼを持っていたが、農業のみをしていたのか、他の職業もしていたのかは全く分からない。   母の父 ...

✞ 1話 父の家の話 ✞

✞ 1話 父の家の話 ✞

文字数:約483文字  ちちの いえの おはなし  父の家は大きな屋敷だったらしい。  昔は今の倍の広さを持った屋敷だったらしい。  跡継ぎだった伯父さんが何代目なのかは知らない。  近所には、遠い親戚らしい家が数件あり、数代さかのぼると 繋 ( つな ) がるらしい。  ...

✞ 0話 祖先と洪水 ✞

✞ 0話 祖先と洪水 ✞

文字数:約432文字  とおい とおい むかしの おはなし  山を見上げ、海を見下ろす土地にご先祖様は住んでいた。  島国のどこでもある風景。  わずかな平地に水田を作り、作物を育て集落を築き上げていた。  それらは洪水であっという間に壊される。  そしてまた、一からのやり直し...