2020年 1月のアーカイブ
✞ 物語の前に ✞

✞ 物語の前に ✞

文字数:約290字  トウツキは私の過去物語。  物語の中で私は『 マル ( マルちゃん ) 』や『かいぬし』と呼ばれます。  私が生まれる前の話は土地に伝わる話や、両親の話をもとに書きます。  私が生まれた後の話は、私の記憶をもとに書いています。  どちらも事実の検証はし...

✞ トウツキ:目次 ✞

現実と空想の物語。 ―  私の生い立ち  ― 私の物語。 トオツキ の続き。 大人のお話。 偽りの恋の相手、守り人さん    お互いに内緒事を続けた会長様 不思議な雰囲気だった魔女さん   一度きりの出会い 告白男性たちと性的少数者 一部、性的な表現があるので、苦手な方は...

✞ トオツキ:目次 ✞

現実と空想の物語。 ―  私の生い立ち  ― お喋り苦手な私の話。 子供時代。 学級崩壊した小学校生活。    校舎引っ越しの中学生活。 担任が逮捕された高校卒業直前。  集団赤痢が起きた専門学校。 自傷行為をした営業時代。 一部、いじめと自傷の表現があるので、苦手な方は注...

✞ 30. And that's all ...? ✞

✞ 30. And that's all ...? ✞

   30. And that's all ...? (それでおしまい) おしまい。 物語の終わりは「幸せに暮らしましたとさ」だと思った。 小さい頃読んだ絵本、紙芝居は大体そんな終わり。 「で、おしまいはどうなるの?ハッピーエンド?」 自分で物語を書くよ...

✞ 29. おかえり ✞

✞ 29. おかえり ✞

   29. おかえり 「お帰り」 「うん」 家に帰ると聞こえる声に私は返事をしない。 小さな頃は何も聞こえなかった気がする。 いつから「お帰り」が聞こえるようになったんだろう? 違和感じゃないけど、なんだろう?しっくりこない。 「お帰りっていったでしょ」 繰...

✞ 28. 記憶 ✞

✞ 28. 記憶 ✞

   28. 記憶 記憶。たくさんの記憶。 思い出とは違う…… 記憶の中で強い感情を伴う記憶が思い出。 中学の思い出、高校の思い出が少ない。 覚えていないのでなく覚えていたくないから。 記憶だけでいいんじゃないかと思っていたから。 記憶。消えゆく記憶。方...

✞ 27. 迷い子 ✞

✞ 27. 迷い子 ✞

   27. 迷い子 迷い子の様に不安な目をしていた。 いつだって、自分の居場所はここじゃない。 そんな目をして泣くのを耐えていた。 でも、逃げ出せない場所。 逃げ出す事が恥となる場所で、 必死に耐えて時間が過ぎるのを待っていた。 泣けない理由を知っている。 ...

✞ 26. パンドラ ✞

✞ 26. パンドラ ✞

26. パンドラ パンドラは開けてはいけない箱を開く。 私が開けた箱もパンドラの箱。 押さえつけた感情。 代わりの箱を開けては閉じて、閉じては開けて…… 代わりでは耐えられなくなる。 絶望と恐怖と混乱が解き放たれる。 赤い雫と共に…… 箱の底に希望は...

✞ 25. 棘(とげ) ✞

✞ 25. 棘(とげ) ✞

   25. 棘(とげ) 「いたっ」 薔薇の花に棘があるのは知っている。 私が触ったのはおじぎ草。 花はほわほわで綺麗じゃないけど、可愛い綿毛みたい。 触れると頭を垂れるように葉が下を向く。 それが楽しかった。 触れると動くと、触れてるうちに棘が刺さった。 棘...

✞ 24. 3K ✞

✞ 24. 3K ✞

24. 3K 3K。感情。気分。気持ち。 ころころ変わる変化形。 何一つ、確かでなく不確か。 つかみ所がないもの。 不安定に安定して安堵する。 自分でさえ掴めないもの。 何が私の心を変えるのだろう。 きっとそれは、些細な事。 <<前    目次  ...

✞ 23. 永遠 ✞

✞ 23. 永遠 ✞

   23. 永遠 「永遠ってどんな意味で使ったのですか?」 電話の向こう側の声。そう言われて、首をかしげる。 『永遠なんてない』 そんな風に私は使った。 ずっと続くものなんてありえない。 いつだって、どんなものも変わってゆく。 留まれば濁り、腐敗していくしか...

✞ 22. ふたり ✞

✞ 22. ふたり ✞

   22. ふたり ふたり、だけの時間。 メッセンジャーでする秘密の会話。 別に秘密にしたいわけじゃない。 他愛もないおしゃべりと、何気ない安心感。 特別な空間。 貴方だから、言える事。 貴方だから言えない事。 そーいう風に人によって使い分ける。 それ...

✞ 21. Cry for the moon. ✞

✞ 21. Cry for the moon. ✞

   21. Cry for the moon. 不可能なことを求めてください。 不可能だと諦める。 「ねぇ。諦めるって『我を極める』のが元らしいよ。 つまり、それ以上伸びないからやめるんだよね」 何気ない言葉が心に留まる。 私はどうだろう? 諦めるのは、伸びない...

✞ 20. モノクロ ✞

✞ 20. モノクロ ✞

   20. モノクロ(モノクローム:1色だけでかかれたもの) 白と黒の世界。 点 、点 、で描いた絵。 「疲れた。やめよ」 そう思ってもまだ描けると描いてみる。 黒に染まる事の無いその絵。 点が増えて、潰れて、白が減る。 それが楽しかったりする。 「細か...

✞ 19. 予定外の出来事 ✞

✞ 19. 予定外の出来事 ✞

   19. 予定外の出来事 ……。 「今日中には、帰れないな」 ああ、まただ。 いつもいつも私の家のドライブは無計画。 適当に近隣の県に行って、日帰りドライブ。 の予定…… 「泊まれるか。聞いて来い」 ってお父さんは言う。 お母さんはしぶしぶ車を出る。 ...

✞ 18. 砂糖菓子 ✞

✞ 18. 砂糖菓子 ✞

   18. 砂糖菓子 お葬式で貰った、花の形の砂糖菓子。 テーブルに一つ。 「食べていい?」 私はそれに手を伸ばす。 「いいよ。誰も食べないし」 砂糖の粉がぼろぼろこぼれた。 紙を敷いた。 テーブルに砂糖菓子一つ。 「食べていい?」 「あんたしか食べな...

✞ 17. 君は誰 ✞

✞ 17. 君は誰 ✞

17. 君は誰 「君は誰」 問う声に私が答える。 「私は私」 その他にはなれず、その他には見えない。 どんな道を行こうとも、誰と付き合おうとも 変えようの無い事実。 でも、迷う事がある。 誰も私の名前を呼ばない時。 でも、惑う時がある。 誰の名前も呼べない...

✞ 16. 涙 ✞

✞ 16. 涙 ✞

   16. 涙 泣いた日を覚えてる? 声を出してその痛みを感じた日。 幼い頃は小さな石一つで転んだ。 犬に追いかけられて転んだ。 そうして、擦りむいた膝が痛くて泣いた。 やがて、大きくなって転ぶ痛みさえ忘れた。 でもふっと思い出す時がある。 紙で切った指先と...

✞ 15. シンドローム ✞

✞ 15. シンドローム ✞

15. シンドローム 朝になる。目が醒める。 いつもの通り学校へ。 いつもの通り無表情へ。 いつもの通り無関心へ。 変わってゆく。 いつもの通り授業へ。 いつもの通り無感情へ。 いつもの通り無感覚へ。 カワッテユク。 「先生がまっすぐ前見て歩いてた...

✞ 14. きせき ✞

✞ 14. きせき ✞

   14. きせき キセキ:軌跡 1.車のわだちのあと。 2.幾何学である条件に適合する点が描く図形。 わだち:車輪が通った後のくぼみ。 新選国語辞典(小学館)より 白い白い雪の中。 残っているのは幾つかの車輪の跡。 ますっぐに延びる線 ゆがんで他の線と...

✞ 13. 螺旋 ✞

✞ 13. 螺旋 ✞

13. 螺旋 螺旋階段、必死に上る。 何処までも続くと思えた。 必死にお父さんの手を追いかけて 置いていかれないように やがて振り返って手を握ってくれる。 「ほら、一段ずつ一歩づつ登れば早い」 そうは言っても、私の小さな足では、一段に二歩づつでやっと 必死に登...

✞ 12. 罪 ✞

✞ 12. 罪 ✞

   12. 罪 「生きる事は罪」 そう言ったのは誰だったか。 「なぜ」 と母に聞いた気がする。 母の答えは覚えていない。 今なら微かに分かる気がする。 他を喰らわねば生きられぬ。 他を犠牲にせねば今はない。 他がいなければ我がいない。 犠牲の上の私。...

✞ 11. 37.5 ✞

✞ 11. 37.5 ✞

   11. 37.5 小さな頃は自分の体温が分からなかった。 自分の体温を知ったのは何時だったろう? 「風邪ね」 体温計は37.5を指している。 それでも平気で飛び跳ねて、風邪だといわれてもピンと来なかった。 「大人しく寝てなさい」 そう言われるたび、なぜ...

✞ 10. ドクター ✞

✞ 10. ドクター ✞

   10. ドクター どんな薬もいらない。 癒しの手も必要ない。 傷がある事なんて認めない。 強がって、強がって― そうしなければ生きていけない。 人に頼れば全てを委ねてしまいそうで 自分で歩く事さえ出来なくなりそうで 怖かった…… 「おいでよ」 ...

✞ 09. 冷たい手 ✞

✞ 09. 冷たい手 ✞

   09. 冷たい手 どんなに擦っても冷たいまま。 どんなに呼んでも振り向かないまま。 どんなに望んでも還らないまま。 人の死を3つ知ってる。 一つは小学低学年の時。 クラスメートがある日来なくなった。 先生が暗い顔で告げる。 貰ったハンカチーフが嬉しかっ...

✞ 08. 境界 ✞

✞ 08. 境界 ✞

   08. 境界 行ってはいけない場所。 見てはいけないモノ。 聞いてはいけない事。 窓の外はいつもと変わらない光景。 変わったものなど何一つ無い。 この膨れ上がる苛立ち以外は。 握り締めた教科書には書いてない。 この感情が何なのか。 廊下で行き交う人...

✞ 07. 携帯電話 ✞

✞ 07. 携帯電話 ✞

07. 携帯電話 利便性を追い求めて 見失ってしまうもの。 母は携帯電話が嫌いだった。 「かけたのに繋がらない。いつも電源切って」 携帯電話を持った父に嫌味そうにそう言っていた。 いつでも何処でも繋がるわけじゃない。 電波が悪ければ、電池が切れればただのガラク...

✞ 06. レトロ ✞

✞ 06. レトロ ✞

06. レトロ 教室の中。雑踏の中。 息をする事さえ出来ないでいた― 変わりたくて変われなくて。 ルーズソックスに短いスカート、茶髪。 高校の時の流行の格好。 もちろん、学校ではそれは禁止されている。 校則違反になるのだ。 でも、人は流行を好む。 特に高校...

✞ 05. 雨 ✞

✞ 05. 雨 ✞

05. 雨 雨の音は嫌いじゃない。 滴る雫の音。 跳ねる水の音。 ヒタヒタとパシャパシャと 何処か物寂しげな音に耳をかしげる。 一人っきりの部屋で 真っ暗な空間で いつも泣きたい私がいる。 いつも泣けない私がいる。 下からはまた、お母さんの怒鳴り声。 ...

✞ 04. 遊園地 ✞

✞ 04. 遊園地 ✞

04. 遊園地 閉じてしまった門の外。 いつも眺めては、ため息ついた。 観覧車が遠く微かに見える。 楽園のような憧れがそこにある。 学校の遠足で行った遊園地。 息苦しくて歩きたくなくなった。 人に合わせて楽しむ事が苦痛だった。 ジェットコースターの上で黄色い...

✞ 03. 鬼 ✞

✞ 03. 鬼 ✞

03. 鬼 小さな時の記憶は不確かで その感覚は今でも忘れられないほど正確。 いつものドライブ。 行くのは大抵、山だった。 山菜取りにどんぐり拾いに様々な目的で。 お正月の初詣も山の中の神社へ行く。 そこで私はいつも鬼を見る。 木々の間に間に 風の間に ...