2019年 10月のアーカイブ
✞ 雨の刺す頃10 ✞

✞ 雨の刺す頃10 ✞

文字数:約1204文字    【 退職 】  心は変わる。  不安定さに慣れてしまう。  これが普通だと思いたくないのに。  指導者さんからメールが来た。 『支部長を交えて話をしよう』  私の返事は苛立ちに満ちていた。 『今まで話して、何も判ってくれなかったじゃない』  ...

✞ 雨の刺す頃9 ✞

✞ 雨の刺す頃9 ✞

文字数:約1197文字    【 孤独 】  いつだって、叫んでいた。  その声は小さくて、小さくて。  誰にも届かなかったけど。  1週間ぐらい経った日の事。  夕食の後、携帯を見ると着信があった。  所長さんからだった。  いつもなら放っておく着信を、かけ直そうか迷った。...

✞ 雨の刺す頃8 ✞

✞ 雨の刺す頃8 ✞

文字数:約1025文字    【 傷痕3 】  生きる事が見えない。  生きている感覚が見つからない。  私は、生きてるの?  店を出て、指導者さんと従姉妹ちゃんは支社の方へ行った。  私はそれに着いて行く事は出来ず、駅前を適当に見ていた。  本屋に座るスペースがあった。...

✞ 雨の刺す頃7 ✞

✞ 雨の刺す頃7 ✞

文字数:約1103文字    【 傷痕2 】  言葉が見えない。  自分が見つからない。  私はなぜ、伝えようとしたの?  気分が落ち着いたのは1時間以上経ってからだった。  足が痺れていた。  指導者さんにメールを送った。 『ごめんなさい。出来ない』  折り返し電話があっ...

✞ 雨の刺す頃6 ✞

✞ 雨の刺す頃6 ✞

文字数:約931文字    【 傷痕1 】  息が出来ない。  居場所が見つからない。  私はなぜ、ここにいるの?  頭痛が止まないまま、会社に行った。  指導者さんから従姉妹ちゃんに話した事を聞いた。  従姉妹ちゃんが話し掛けてきた。 「昨日は、よく休めた?」 「お...

✞ 雨の刺す頃5 ✞

✞ 雨の刺す頃5 ✞

文字数:約842文字    【 休日 】  傷は誰の目にも触れさせたくないの。  内緒話のようにひっそりと  秘密のままでいて欲しかったの。  次の日、父が指導者さんに連絡して私は休む事になった。  のは、私が知らない所でだった。  朝、目が覚めると食パンをいつも通り食...

✞ 雨の刺す頃4 ✞

✞ 雨の刺す頃4 ✞

文字数:約929文字    【 涙雨3 】  何もしなかった。  何も出来なかった。  どうして、責める事が出来るだろう?  家が近くなった頃、指導者さんの視線が私の腕に向く。  指導者さんの顔色が変わったのが判った。 「どうしたの?」  車を道端にとめ、私の腕をまく...

✞ 雨の刺す頃3 ✞

✞ 雨の刺す頃3 ✞

文字数:約1093文字    【 涙雨2 】  何が出来たと言うのだろう。  何が出来ると言うのだろう。  どうして、こうしなければならないの?  会社に着いた時には、またびしょ濡れだった。  このまま中に入るのはさすがに、気が引けた。  とりあえず、雨の当らない所でうず...

✞ 雨の刺す頃2 ✞

✞ 雨の刺す頃2 ✞

文字数:約1127文字    【 涙雨1 】  何をしたいのだろう。  何をしているんだろう。  どうして、こうしてるの?  毎日続く雨の日。  指導者さんは従姉妹の指導者さんとして忙しく、私はいつもの通り、指示されないまま動く。  適当に書類を作って、時間を見て会社を出る。...

✞ 雨の刺す頃1 ✞

✞ 雨の刺す頃1 ✞

文字数:約1293文字    【 涙声 】  伝えたい言葉は不正確。  言葉は何も伝えない。  無意味な音が響くだけ。  雨が降っていた。  梅雨に入りかけた空はいつも曇っていた。  指導者さんと一緒に車でお客さんの家などを回っていた。  指導者さんの言葉の端々に刺があったよう...

✞ 木漏れ日の頃7 ✞

✞ 木漏れ日の頃7 ✞

文字数:約677文字    【 小言 】  愚かで我侭な行為。  自分勝手で幼稚な行動。  それが、他人の目。  週が開けた日。  何事もなかった様に……とは、いかなかった。  会社に行くと、無断欠勤の話。 「ずっと駅に居たの?  今度から電車に間に合わなかったら、誰か迎え...

✞ 木漏れ日の頃6 ✞

✞ 木漏れ日の頃6 ✞

文字数:約653文字    【 欠勤2 】  何もないよ。  何も無かった事にするの。  誰も何も知らなければ良いの。  電車に乗る気もない。  連絡する気もない。 『あー、やばい。無断欠勤しちゃった。』  淡々とそんな事を思った。  携帯の電源はとっくにOFFにしてあ...

✞ 木漏れ日の頃5 ✞

✞ 木漏れ日の頃5 ✞

文字数:約723文字    【 欠勤1 】  朝が来なければ良いと思った。  眠らなければ、朝が来ない気がして夜更かしした。  布団の中は悪夢でいっぱい。  寝坊した。  慌てる事もなくそう思った。  いつも、ギリギリに起きていた。  それが、寝坊した。  間に合わないと諦め...

✞ 木漏れ日の頃4 ✞

✞ 木漏れ日の頃4 ✞

文字数:約600文字    【 仕事 】  人を使う。  人に使われる。  別に私はどうでも良かった。 「これ、やっておいて」  ボーっとしていた私に、指導者さんはチラシを渡す。  私はそれを折る。  自分の仕事は一通り終わらせて暇だった。  それを見ていた先輩が同じ様にチ...

✞ 木漏れ日の頃3 ✞

✞ 木漏れ日の頃3 ✞

文字数:約573文字    【 歌声 】  息苦しい。  歌う事なんて出来ないよ。  声を出して伝わったものなんて無かった。  その日はミーティングでカラオケにいった。  誰がどの曜日にどこの企業へ行くかとか、  これだけの目標があるとかの話が進む。  私はぼんやりとそれを聞...

✞ 木漏れ日の頃2 ✞

✞ 木漏れ日の頃2 ✞

文字数:約648文字    【 化粧 】  嫌いなの。  短いスカートも化粧も、嫌い。  大人になりたかったわけじゃない。  その日は暑くて、スカートをはいて行った。 「スカートはいてくるの、初めてだね」  先輩が私のスカートに気がついて言う。  それに続いて、指導者さ...

✞ 木漏れ日の頃1 ✞

✞ 木漏れ日の頃1 ✞

文字数:約852文字    【 守護 】  狂いだす。壊れかける。  叫びにならない叫び声。  何を望んだのかさえ、忘れ果てる。  従姉妹ちゃんが同じ会社に入ってきた。  私と同期で入った人は契約をたくさん取って来る。  置いていかれる気がした。  違う、置いていかれた...

✞ 猫の恋の頃4 ✞

✞ 猫の恋の頃4 ✞

文字数:約875文字    【 自傷 】  痛みを感じなくなるほど、心が麻痺する。  何もいらない。何も欲しくない。  ただ、何もかも忘れたいだけ。  夜、どうしようもなくなって、遠くにいる友達に携帯メールした。 『辞めたい。辞められない。無断欠勤でもしようかな』そんな...

✞ 猫の恋の頃3 ✞

✞ 猫の恋の頃3 ✞

文字数:約817文字    【 抑制 】  制御しきれないほどの、感情。  押し留めて、押し殺して。  幾重にもかける、抑制。  インターネットが繋がらなくなった。  その場所は私にとって唯一の外だった。  息抜きの出来る場所だった。  ゴールデンウィーク中も、ネットには...

✞ 猫の恋の頃2 ✞

✞ 猫の恋の頃2 ✞

文字数:約1055文字    【 猫傷 】  苛立ちがネコに伝わったのか。  ただの偶然なのか。  ネコが止めたような気がした。  ネコの恋の季節だった。  その日、いつもなら仕事でしないネコの散歩をした。  私は猫の動かない様子に、苛立って紐を引っ張る。  猫は車庫に居た...

✞ 猫の恋の頃1 ✞

✞ 猫の恋の頃1 ✞

文字数:約658文字    【 折紙 】  紙飛行機が部屋を埋め尽くす。  それに乗って、どこかへ行ってしまいたかった。  ここから逃げ出したかった。  電車が通り過ぎる音が聞こえた。  連休前……私は会社に行く気が無かった。  辞めてしまいたかった。  自分の保険の成績...

✞ 桜の降るの頃4 ✞

✞ 桜の降るの頃4 ✞

文字数:約572文字    【 物欲 】  モノで心が満たされるなら、とても楽でしょう。  そう出来るなら、そうしたでしょう。  だけど、それでは満たされないのです。  その日、帰りに時間がなければ私はそんな事しなかった。  1時間1本の田舎で乗り過ごせば、待ち時間は有り...

✞ 桜の降るの頃3 ✞

✞ 桜の降るの頃3 ✞

文字数・約872文字    【 花見 】  花が無くても花見は出来る。  名目だけあればいい。  目的は別だから。  会社の花見があった。  指導者さんが幹事役で色々と動き回っていた。  私のことなど、考えていられないくらい。 「ねぇ。カイヌシちゃんはどうするの?」 ...

✞ 桜の降る頃2 ✞

✞ 桜の降る頃2 ✞

文字数:約1468文字    【 変化 】  変わらない事に苛立った。  変わってしまう事が怖かった。  変化は私の目に見えていなかった。  桜の咲く頃。  それなりに仕事が楽しいようにも思えていた。  だけど、それは日々が淡々と過ぎる事に慣れただけ。  朝起きて、職場に...

✞ 桜の降る頃1 ✞

✞ 桜の降る頃1 ✞

文字数:約584文字    【 旅人 】  些細な事が許せなかった。  嬉しいハズの言葉に虚しさを覚えた。  いつから、こんなに余裕がなくなったのだろう。  桜の蕾が膨らむ頃。  旅人さんに会った。 「すみません」  研修の帰りに声を掛けられた。 「駅はどこですか...

✞ 年明けの頃5 ✞

✞ 年明けの頃5 ✞

文字数:約1110文字    【 吹雪 】  冷たさも寒さも感じなかった。  自分が歩いている場所さえ、知らなかった。  行き場所を決める事が出来ないまま歩いていた。  雪の季節が終る頃。  研修で一日の報告をした後、課長さんに叱られた。  悪いのは私だと思う。  やる気...

✞ 年明けの頃4 ✞

✞ 年明けの頃4 ✞

文字数:約1957文字    【 入口 】  始まってしまえば、走り出せるような気がした。  立ち止まる事さえしなければ、振り返る事さえしなければ、どこまでも行ける気がした。  例えそれが、無謀でも。例えそれが、暴走だろうとも。  とりあえず、職の不安は消えた。  ただ家...

✞ 年明けの頃3 ✞

✞ 年明けの頃3 ✞

文字数:約1149文字    【 研修 】  動き始めたものは何だったのか。  私は未だ、気が付かずにいた。  続く日々に刻まれた波紋はゆっくりと広がる。  入社の後は研修があるという。研修後の試験に受かれば、仕事が出来るのらしい。  研修期間は2週間程度。駅前の支社での...

✞ 年明けの頃2 ✞

✞ 年明けの頃2 ✞

文字数:約924文字    【 入社 】  意味も分からず、流されるまま。  行き着く場所はどこでしょう。流れ着く場所も知らないまま。  狂い始めたのはどの場所からだったのだろう。  家に帰った私に母は冷ややかだった。 「どうだった?」 「交通費、貰った~」  私はい...

✞ 年明けの頃1 ✞

✞ 年明けの頃1 ✞

文字数:約1466文字    【 新年 】  何処までも続く日が当たり前だと疑わなかった。  幸せを感じる事も不幸せを感じた事もない。  続く日々は平穏無事で、何事もなく過ぎ去ると思っていた。  年が明けても、何も変わらない気がしていた。  職を探してしっかりしなきゃと焦...

✞ 年明けの頃0 ✞ 

✞ 年明けの頃0 ✞ 

   【 ××× 】  判ってる。  これが異常だって。  それでも、止められない。  止めない。  そうしなければ、生きられないから。  そうする事を知ってしまったから。  これはいたみ。見えない『いたみ』  これは叫び声。声にならなかった『叫び声』  これは涙の痕...

✞ ×バツ×:目次 ✞  

閲覧注意の物語です。 ー  これは壊れた物語  ― 保険営業の仕事を私に紹介した父。 それに反対した母。 保険営業の仕事を始めた私は、変わっていった。 ※自傷行為の表現があります※   自傷行為の推奨はしていません。 :: ×バツ× ::  200...