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【 物欲 】
モノで心が満たされるなら、とても楽でしょう。そう出来るなら、そうしたでしょう。
だけど、それでは満たされないのです。
その日、帰りに時間がなければ私はそんな事しなかった。
1時間1本の田舎で乗り過ごせば、待ち時間は有り余るほどある。
暇だったのだと思う。
駅に着いて思いついた。
コンビニに寄る事にした。
欲しがっていたわけじゃないと思う。
「いつか」で良かった。
今じゃない。
いつでも良かったのに……。
コンビニに入って、探していたそれに目が行った。
どうしようかと迷って、お菓子のコーナーに回った。
お腹がすいていたわけじゃない。
それから、一通り店内を回って時間を潰す。
特別欲しがっていたものじゃない。
だって、それは持ってるものだから。
マンガを描く為に持っていた。
でも、それとは別の目的で欲しかった。
それはマンガを描く為のモノと、別にしたかった。
商品を手にとって幾つかのお菓子と一緒にレジに持っていった。
家に帰って、お菓子を兄弟で分けて食べた。
残りは部屋に放り投げた。
使う気はまだこの時は無かった。
数日後、思い出したように取り出して封を破る。
別に嫌な事があったわけでなく、試してみたかっただけ。
腕につけようとした傷は赤い線が残るだけ。
冷たい刃の感触がした。
簡単には切れないのだと思った。
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