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✞ 桜の降るの頃4 ✞

2022/10/25
文字数:約572文字

   【 物欲 】

 モノで心が満たされるなら、とても楽でしょう。
 そう出来るなら、そうしたでしょう。
 だけど、それでは満たされないのです。


 その日、帰りに時間がなければ私はそんな事しなかった。
 1時間1本の田舎で乗り過ごせば、待ち時間は有り余るほどある。
 暇だったのだと思う。

 駅に着いて思いついた。
 コンビニに寄る事にした。
 欲しがっていたわけじゃないと思う。
 「いつか」で良かった。
 今じゃない。
 いつでも良かったのに……。

 コンビニに入って、探していたそれに目が行った。
 どうしようかと迷って、お菓子のコーナーに回った。
 お腹がすいていたわけじゃない。
 それから、一通り店内を回って時間を潰す。

 特別欲しがっていたものじゃない。
 だって、それは持ってるものだから。
 マンガを描く為に持っていた。
 でも、それとは別の目的で欲しかった。
 それはマンガを描く為のモノと、別にしたかった。

 商品を手にとって幾つかのお菓子と一緒にレジに持っていった。

 家に帰って、お菓子を兄弟で分けて食べた。
 残りは部屋に放り投げた。

 使う気はまだこの時は無かった。


 数日後、思い出したように取り出して封を破る。
 別に嫌な事があったわけでなく、試してみたかっただけ。
 腕につけようとした傷は赤い線が残るだけ。
 冷たい刃の感触がした。
 簡単には切れないのだと思った。




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