文字数:約931文字
【 傷痕1 】
息が出来ない。居場所が見つからない。
私はなぜ、ここにいるの?
頭痛が止まないまま、会社に行った。
指導者さんから従姉妹ちゃんに話した事を聞いた。
従姉妹ちゃんが話し掛けてきた。
「昨日は、よく休めた?」
「お父さんの仕事、手伝ってった」
私は笑っていった。
「は? 何してるの?
呆れ顔で従姉妹ちゃんは私に言った。
「何してるんだろうね?」
私は笑った。
……本当に何したかったんだろう? 父は。
「パソコン入力だったら、出来るでしょ?やっておいてね」
指導者さんはそう言うと、従姉妹ちゃんと出て行った。
私はそれをぼんやり見ながら、ゆっくりと立ち上がる。
いつものようにロッカーを開けて、機械を取り出して、繋げる。
パソコンが立ち上がる時間、わたしは外を見ていた。
画面はついた。
いつもの作業……の筈だ。
手が震えてる。
息が乱れてる。
……いつもの作業だよ?変わらない事をするだけ。
何かが、おかしい。
無理矢理、触ろうとしてみても何かが拒絶する。
止まらない。
止められない。
……大丈夫。大丈夫だから。
呪文のように繰り返し心の中で唱えても、無駄。
落ち着けない。
手が動かない。
身動き一つ取れなくなる。
息を必死で整えようとする。
周りの雑音が消え去る。
――何してるんだろう?
ココデナニヲシテルノ?
自分の居場所がない気がした。
――泣きたい。
違う。
――切りたい。
どうにか震えを止めてみようとするけど、無駄。
機械入力さえ出来ない!!
――何も出来ない。
私はロッカーに機械を投げ込むように、仕舞った。
苛立ちと情けなさと苦しさを抱えたまま、カバン1つ引っ手繰った。
無言で会社を出て、外へと歩き出す。
どこへ行くのか考えもせず。
でも、そう遠くへ行く気もしない。
人の少ない場所。
水の音が聞こえる場所。
そこで、塀を背にして座り込む。
切りたい。きりたい。キリタイ。
その感情を必死で押さえ込む。
代わりに涙が溢れる。
――何をしてるんだろう?
「どうしたの? 大丈夫?」
座り込んだ私の姿を見て心配してか、見知らぬ2人から声をかけられた。
「大丈夫です」
私は2人ともに同じ答えを返した。
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