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✞ 雨の刺す頃7 ✞

2022/11/02
文字数:約1103文字

   【 傷痕2 】

 言葉が見えない。
 自分が見つからない。
 私はなぜ、伝えようとしたの?


 気分が落ち着いたのは1時間以上経ってからだった。
 足が痺れていた。
 指導者さんにメールを送った。
『ごめんなさい。出来ない』
 折り返し電話があった。
 話し合おうというもの。

 指導者さんと従姉妹ちゃんが来た。
 私は降りてきた従姉妹ちゃんと話し合う。
「どうしたいの?」
 従姉妹ちゃんがそう聞く。
 私はちらりと車に乗ってる指導者さんのほうを見た。

「指導者さんには聞こえないし、私になら何言っても平気だよ」
 私は迷う。
 言葉が見つからない。

 そうこうしてる内に、会社の人が出てきた。
「あら? 何してるの?」
「いえ。別に」
 従姉妹ちゃんが苦笑いで答えた。
「ほら、どうしたいのか言ってくれないと」
 少々、苛立った様子で従姉妹ちゃんは言う。

「……指導者さんも一緒に」
 私は小さな声で、そう言った。

 そして、車に乗って場所を移した。
 3人でファミレスに入る。
 お昼には時間が早く、かなり席が空いていた。
 早めの昼食をとることになった。

「食欲無いでしょ?」
 従姉妹ちゃんが私に向かっていった。
 私は苦笑いをした。

 食べ終わる頃、私は指導者さんに手紙を差し出した。
 内容は日記のようなもの。

 読み終わるのを待ちながら、私はご飯を口に運ぶ。
 味はしなかった。
「わからない」
 指導者さんは読んだ後、そう言った。

 そして、何度か読み直す。
「従姉妹ちゃんにも読んでいい?」
 指導者さんは私に聞いた。
 私が頷くのを見て、従姉妹ちゃんに紙を差し出す。

 怖かった。
 ――判ってもらえなかったら?
 ――これ以上、傷ついたら?
 ――判って欲しい!!


「暇なんだね」


 それが、返事だった。

 一瞬、言葉を見失う。
 ……何て言ったの?
 血の気が引いた。
 ……それが答え?
 眩暈がする。
 『暇』
 私が傷つくのも、暇だから?

「こんなの書く暇あるなら、小説でも書けば?」
 ……。
 声が出ない。
「わかるかも」
 ふいに従姉妹ちゃんが呟く。
「死にたいんでしょう?」
 違う。
 違う。
 違う。

 どこにそんな言葉があるというのか。
 頭がぐらぐらする。
「皆、仕事なんて嫌なんだよ? それでも、頑張ってるんだから。そんな事でどうするの?」
 指導者さんが宥めるように私に言う。
 皆って? 皆ってナニ?
 その中に私は居ないんじゃないの?

 納得なんてしてなかった。
 けど、私は笑ってみせる。判ったという風に。

「ちょっと、お手洗い」
 私はそう言って席を立った。
 眩暈がする。
 絶望と窒息感と狂気。
 腕を切ってしまいたかった。
 その感情を抑えて、ふと私は鏡の中の自分を見た。
 酷い顔をしていた。




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