文字数:約1025文字
【 傷痕3 】
生きる事が見えない。生きている感覚が見つからない。
私は、生きてるの?
店を出て、指導者さんと従姉妹ちゃんは支社の方へ行った。
私はそれに着いて行く事は出来ず、駅前を適当に見ていた。
本屋に座るスペースがあった。
疲れた私は、そこに座る。
……切りたいなぁ。
手にしていたのは刃。
すっと引いた線は赤く染まる。
――ほら、安心。
傍で見知らぬ子供が無邪気に笑っていた。
帰りは従姉妹ちゃんと一緒に帰った。
「あのさ。あの手紙、嬉しかったって指導者さん」
「ふーん」
私は気の無い返事を返す。
「だいたいあんたもさ、考えすぎだよ」
「そう? インターネットである人に見せる事話したら、反対された。私が傷つくって」
「そりゃ、これ、悪い事しか書いてないじゃん。
誰だって、こっちが悪者みたいだし。大体、ネットの中だけの関係でしょ」
『だから、何も判るわけない』と言われたような気がした。
「そうかもしれないけど」
だったら、あなた達は判ってくれるって言うの?
……何もわかってないくせに。
夜になって、思い返した。
小説……書いて見ようかな。
真っ白な画面を見て、私は気づいた。
書けない……
いつから、書けなくなった?何で、何も出てこない?
……書けないから、苦しい。
書けるくらいなら、切ったりしてない。
昼間の二人の意見は、私にとって何の役にも立たない。
私は編集長さんに泣きついた。
編集長さんは私に心地よい言葉をくれる。
編集長さん:『ノアちゃんが信じられなくても、ノアちゃんが必要だよ』
ノア:『信じられない』
編集長さん:『それでも、必要だよ』
必要とされてる事が信じられなかった。
自分が要らないと思う自分を、誰かが必要だと思ってくれるなんて思ってなかった。
次の日も、休んだ。
そして、月曜日。
父が聞いてきた。
「会社、辞めるのか?」
私にはまだ、迷いがあった。
「辞めるなら。伝えるから」
何も言わない私に父が言った。
「辞める」
私はそう言った。
そして、父が指導者さんに電話をしてくれた。
父の仕事を手伝いながら見た青い空が、私には青く見えなかった。
「ラーメンでも、食べに行くか」
昼になって父が言い出した。
ラーメン屋で向かいに座った父が聞く。
「仕事、そんなに辛かったか?」
「え? そーでもないよ?」
私は目の前のグラスを握りながら、普通に答える。
父は黙り込んで目頭を押さえた。
親を泣かせて、泣きたいのは私の方だった。