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✞ 雨の刺す頃5 ✞

2022/11/02
文字数:約842文字

   【 休日 】

 傷は誰の目にも触れさせたくないの。
 内緒話のようにひっそりと
 秘密のままでいて欲しかったの。


 次の日、父が指導者さんに連絡して私は休む事になった。
 のは、私が知らない所でだった。

 朝、目が覚めると食パンをいつも通り食べる。
 私は会社に行くつもりだった。
 が……
「仕事、手伝え」
 いつもながら人の意見など、お構い無しに父は言った。
 父の手伝いをしながら、私はぼんやりと切りたいと思った。

 考えなければいけない事はたくさんある。
 考えたくない事もたくさんある。
 だけど、父の仕事を手伝ってる間は考える時間なんてなかった。

 夜、酔った母が叫んだ。
「騒がせたかっただけなんでしょう!?」
 ――!!
 私は何も言えずに俯く事しか出来なかった。

「おい!!」

 父が止めに入ったが、私の耳にそれは届いている。
 この時になって、私は初めて指導者さんが母に伝えた事を知った。
 伝える事なんて、考えてなかった。
 伝えて欲しくなんてなかった。
 泣き声で叫ぶ母に何を言えばよかったのだろう?
 それ以上母は何も言わなかったが、私は居たたまれなくて部屋を出た。


 伝えた相手の一人、編集長さんとチャットをした。
 私の欲しい言葉を言ってくれる。
 母の事を話す。

 編集長さん:『それはしょうがないよ。親も驚いてるだろうし』
 しょうがないのかぁと悲しくなった。
 その話は長くは続かず、重くなったり、軽くなったりしながらお喋りを続ける。
 ノア:『あのね。指導者さんに、見せようと思うの。サイトのお家で書いた事』
 編集長さん:『止めた方が、良いと思うよ。』
 ノア:『でも、見せてみたい』
 編集長さん:『今まで判ってくれないと思ってたから、言えなかったんじゃないの?』
 ノア:『そうかもしれないけど』
 編集長さん:『それに、きっと判らない人に見せてもノアちゃんが傷つくだけだよ?
   それでも見せるの?』
 ノア:『見せてみたい。傷ついたら、泣きつきに来る~(笑』

 その夜は話に熱中して、久しぶりに切らなかった。




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