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✞ 木漏れ日の頃2 ✞

2022/11/01
文字数:約648文字

   【 化粧 】

 嫌いなの。
 短いスカートも化粧も、嫌い。
 大人になりたかったわけじゃない。


 その日は暑くて、スカートをはいて行った。
「スカートはいてくるの、初めてだね」
 先輩が私のスカートに気がついて言う。
 それに続いて、指導者さんも私を見た。

「いいね。そーいうのも。でも、もっと短い方が良いよ」

 私はスカートを一回、腰の所で巻いてみる。
「もっと。ちょっと、ごめん」
 そう言って、指導者さんが膝が見えるくらいまで巻き上げる。

「ほら、こっちの方がかわいい」
「うん。さっきよりいいよ」
 先輩も同じように私を誉めた。
 だけど、私は嫌だった。

 スカートを履くこと嫌さえだった。
「だね。この方がお客への印象もいいよ」

 男の客への?
 どこかで苦笑いしている私がいた。

 私の気持ちとは裏腹に、話が変わる。
「それにもう、社会人なんだからちゃんと化粧した方がいいよ」
「前に、グロスあげたよね? どうしたの?」
 指導者さんから貰ったグロスは、カバンの中で一度も使った事はなかった。
「えーと」

 私は言葉を濁す。お化粧も嫌い。
「今度、つけて来てね」
 それでその時は話が終わった。
 だけど、私がそれをつける事は無かった。


 試験に合格した頃に一度、指導者さんにお化粧された事があった。
 簡単に顔を弄られただけだけ。
 その時に「使いかけだけど、あげる」と言われて、グロスを貰った。
 帰って私の顔を見た家族は笑った。
「変わったねぇ」や「何、おもちゃにされてるの?」と、散々言われる。
 私も「何やってるんだろうねぇ」と笑った。




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