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☆番外☆ 女の記憶弟は『唐突にやってきた、新たな兄弟』であると同時に
『私が女であり、要らないもの』という事を印象付ける存在でもあった。
ド田舎の待望の長男である。
周囲の喜びようは半端ではなかった。
誰もが
「やっと、男の子ね。おめでとう」
と言った。
その言葉は女の私に重く伸し掛かった。
母も父も、「やっと男の子が生まれた」なんて一言も言わなかったが、
会う人、会う人が、「頑張ったわねお母さん。やっと男の子よ」と言う。
その意味が、「
女はいくら生まれても役に立たないのだ。
今でも兄弟の話をして、一番末が弟だというと
「お母さん、男の子が産まれるまで頑張ったわね」
と、言われると何とも言えない気持ちになる。
女の私はあっという間に弟に力で勝てなくなった。
私が小学6年、弟が小学1年の時だった。
妹と弟のケンカを止めようとして、弟に指をひねられた。
指は捻挫した。
利き手だったので数日間不便だった。
それ以降、ケンカを止めるのはやめた。
父や母はたとえそれがケガをするようなケンカでも、兄弟げんかは止めなかった。