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寮生活も半年以上経 ったころ。いろんなものが限界に達してきた。
まず大きいのは、ずっと集団生活で気が休まる場所が、ないということだった。
部屋は一人部屋なので、安心できる……わけではない。
壁は薄いので、廊下の音も隣の音も筒抜け。隣はトイレだったので、トイレの音も聞こえる。
学校も寮も友達と一緒と言うのも、私には合わなかった。
友達が悪いわけではないが、『ずっと誰かと一緒』というのは、かなりきつい。
行きも帰りも一人でいたいという思いが、強くなった。
ある日、電車を降りるとカバンの中の定期が見つからなかった。
乗る時にはあったのだから、忘れてきたわけではない。
前をすたすたと歩く友達に一言「待って」と言おうとしたが、その気力がなかった。
私は結局、『まぁ。いいか』と思った。
友達とこれ以上、一緒にいる事に耐えられないのだから、ここではぐれても問題はない。
学校への道も分かっているし、呼び止める意味がなかった。
私が定期を見つけた頃には、人波は収まって、ゆったりとした時間が流れていた。
私はその中を歩いて、学校へ行った。
学校へ行っても、友達の傍に座る事はやめた。
友達は何も言わなかった。
しばらくは、周囲から「どうしたの?」と言われたが、「特に何もない」と答えた。
友達が気にしているという事も人づてに聞いた、「うん。でも、何でもないから」と答えた。
嫌いになったわけではないが、ずっと傍に居るのはつらいというのを、どう伝えたらいいのかが分からなかった。
正直、その友達が何を思っていたのかは分からない。
行き帰りも一緒だけれども、何も話さないという事が続いた。
友達とずっと一緒の苦痛からは、逃れる事が出来た。
けれども、寮の雑音はどうしようもなかった。
外に出ればいいのかもしれないが、徐々に外に出ることさえも億劫 になって行った。
私は学校と寮を往復して、寮にいる時はヘッドフォンをして音楽を聞くようになっていた。
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