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しつこいが、私はお喋 りが苦手だ。
私が何とか最低限のお喋 りをしていたのは、こたみちゃんがいたからだ。
受験の時、推薦入試が視野に入らなかったのは『面接』があったから。
が、担任のつぼの妖精は、なぜか私に推薦入試を勧めてきた。
大人のいろんな事情かなと邪推をしつつ、あまりにも推してくるので母が「やってみたら?」と言いだした。
成績も小論文も問題はない。問題は『面接』だった。
『面接』に迷いつつも、小学生の時の作文発表を思い出して、推薦にすることにした。
作文発表よりも目の前にいる人は少ない。だから大丈夫……と自分を奮い立たせた。
面接の練習の日。
自分で思うよりも、受け答えが出来たと思った。
それは、間違ってはいなかったらしく、練習相手になってくださった先生からも「思ったよりも、出来ているじゃん」と言われた。
「本当は、もっとできないと思っていたのよね」との言葉も続いていた。
これを言ってきたのは、母を虐めていたという隣の担任だった。
なるほど、こんな風に率直に言うところが母は嫌いだったんだなと思った。
もちろん何も問題がなかったわけではない。
沈黙の時間があったり、やはりまだ声が小さかったりと修正点は多かった。
声の大きさは練習を繰り返すことで少しずつ大きくなった。
沈黙の時間は、一旦 「はい」と答えて、考える時間を作る事で減らすことが出来た。
質問は決まり切っていて、それさえ覚えれば問題はなかった。
練習の甲斐があってか、推薦入試は合格した。
合格後に職員会議の事を知った。
実は私を推薦するかどうかで、職員会議は荒れていたらしい。
私を推す担任と、その他の先生たち……うっすらとなぜか、隣の担任を思い浮かべてしまった。
もちろん反対理由は『面接』だ。私が面接に受かるわけがないから、推薦できないという事だったらしい。
それを担任が、「大丈夫です。やれます」と推してくれた。
それまで、特に可もなく不可もない壺の妖精 が初めて、神様に思えた。
人と喋 る事が少ない私を気にして、「すみません、何もできなくて」とも言っていたらしい。
担任が推薦を勧めてきた、私に自信を持たせるためだったらしいと卒業後に知った。
そうまでして入った高校は、別にそこまでレベルが高いわけではない。
地元の子達が行く、普通の学校だった。
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