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✞ 12話 リーディング講座 ✞

2023/07/24
文字数:約923文字
 いろんな講座に行ったけれど、次第に『予約自体を忘れる事』が増えた。
 予約をネット上でして、講座当日にすっかり忘れ去っている。後から『当日キャンセルは困ります』というメールを見て、今日が講座の日だったと思い出す。
 そんな感じになってしまった。


 そして、講座に行く事が少なくなった。


 少なくはなったけれども、時々、気になった講座には予約を入れてみる。予約している時点で、『覚えていられますように』と祈るようになった。
 祈りが通じるかどうかは疑問だけれども、祈らなければいけなくなるほど忘れてしまう。

 リーディング講座は、『覚えていた講座』の一つだった。

 講師は8話のヒプノ講師の知り合いで、講師に興味を持ったから行きたくなった。
『本当に視える』人と言う事だったが、私は半信半疑だった。仮に視えたとしても、私には視えないのだから確かめようがない。


 当日になった。
 講座の会場に入って、他の参加者様が集まり時間になるのを待つ。
 最初は『視える人』が参加者の手を握って、それぞれに簡単な挨拶あいさつをして回った。
 他の参加者さんの様子を見つつ、自分の番になるのを待つ。

 私の番になった。
 手を差し出されたので、こちらも手を差し出す。

 ……。
 …………。
 ………………。
 握っている時間が長い。

 他の参加者との握手はもっと短かったはずと思いながら、相手の顔を見る。
 相手は目を閉じたままなので、何を考えているのかも分からない。
 振りほどいていいの? けれど、それもなにか違う。

 どうしたらいいのかな……と考えたが、そのまま手を握らせたままにした。

 長々とつながれた手は、やがて離された。

「死者に同情しなくてもいいんだよ」
 私には意味が分からなかった。
 死者なんてものが見えた事はないし、声が聞こえるというような心霊体験もない。
 考え込んでいるうちに、次の人へと移っていった。


 『視える人』は全員に挨拶をして、手を握っていった。
 私の他にもう一人、長めに握手していた人がいた。周囲の話から、その人が看護師をしている事が分かった。
 最終的に『除霊をしていた』という話をしていた。

 彼の眼には何が視えていたのだろうか。
 知りたくないケド、気になってしょうがないと思った。




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