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✞ ×乱雑箱× ✞

2022/11/02
文字数:約1154文字

   【甘味】


 冬は生命保険の試験だった。
 春になって損害保険の試験を取った。
 そのお祝い(?)にパフェを出張所の皆で食べに行った。
「ここのパフェね。大きくて美味しいよ」
 と言われたが、パフェなんて食べた事がない私には見当がつかない。
 一通り仕事を終わらせて、午後にそれぞれ店に集合。
 私は同じ出張所の先輩2人と一緒に車に乗せてもらい、店に向かう。
 結構人気のある店らしく、行列が出来ていた。
「どうする?」
 一緒に来た先輩の一人が言った。
「少し待ってみようか」
 車の中で待ってみる。
 そのうち待ちきれなくなって、携帯で連絡を取る。
「もう少しで、来るって。並んでいよう」
 先輩は電話を切りながら、言った。
 順番が来ても出張所の皆が集まっていたわけじゃなかった。
 店の人に聞くと、席を先にとって置くような事は出来ないようだった。
 私たちは私たちで、先に食べている事になった。
 運ばれてきたイチゴパフェは大きくて、食べ終わる頃にはお腹いっぱいになった。
「前に来た時はもっとイチゴが大きかった気がするけどな」
 先輩はぼやいていた。
 けど、私にとっては美味しくてお腹がいっぱいになったので、満足だった。


   【子供】

 同期さんには子供がいる。
 名前をトワ君と言った。
 時々、会社につれて来ている事もあった。
 その日も、トワ君が会社にいた。
 私が自分の席で仕事をしようとしていると、トワ君がテッテッと歩いてきた。
 目の端でその姿を見ながら、仕事を始めようとした。
 が、不意に指を指される。
 そして、一言。

「バァバ」

 ……。
 一瞬、頭の中が真っ白になった。
 そして、頭の中で「バァバ」の意味を検索する。
 「婆」の漢字がヒットした。
 20代前半でそう言われる歳なのか?
 それを見ていた所長さんが笑って言う。
「トワ君、誰にでもそう言うんだよ。
でも、カイヌシちゃんの歳でそれはないよね。私の歳ならありえるけど」
 同期さんが来て、トワ君を抱く。
「トワ。おねーさんでしょ。バァバじゃないよ」
 慰めがなんとなく虚しかった。
 それなりに、ショックな日だった。


   【飼犬】

 犬が嫌い。
 というより、動物全般が苦手。

 会社に大御所様がいた。
 かなりの額を稼いでるという噂の人。
 そして、この支部で一番怖いと言う噂の人。
 その人が会社に犬を連れてきていた。
 おとなしい犬で吠えはしなかったが、少々大きいかった。
 なるべくその犬には近づかないようにしていた。

 ある日。
 階段で犬を連れた大御所様とすれ違った。
 私はなるべく、犬との距離を取りたかった。
 その事だけで頭がいっぱい。
 お願いだから、近づかないで―――。

 そして、すれ違った後、一緒にいた指導者さんの言葉にハッとする。
「大御所様に挨拶しなかったね」
 ……犬だけしか見てませんでした。




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