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✞ 3話 牛乳嫌い促進強化 ✞

2023/01/15
文字数:約680文字
 何度も書くが、私は牛乳が嫌いだ。
 給食の牛乳は飲まずに持ち帰っていた。
 それは学年が上がっても同じだった。

 担任はそれについて特に何も言わなかった。
 やがて、担任が産休に入って、代理の先生が来た。
 この先生は、私が牛乳を飲めない事を問題にした。
 そして、「飲め」と強制した。
 最初は一口。
 その次は三分の一……と言った感じで量を増やす。

 飲めない分は『残りは捨ててきていいよ』と先生は言った。


 私は耳を疑った。
 それまで私は「食べ物を捨てては、いけない」と習ってきた。
 牛乳も『捨てるくらいなら、持ち帰ってきなさい』と、母が言ったから持ち帰ってきた。
 それを、先生は簡単に「捨てろ」と言う。
 私は牛乳を捨てた。
 白い液体が排水溝に吸い込まれていくのを見ていた。

 牛乳を口にするたび、頭からかぶった記憶がよみがえる。
 牛乳を捨てる度、食べ物を捨てる罪悪感でいっぱいになる。
 午後の授業は口の中が気持ち悪くて、授業に集中できない。
 最終的には『全ての飲め』と言われて、飲んだ。
 それを見て、代理の先生は満足げに「飲めるじゃない」と言った。

 早くこの先生が居なくなればいいのに、と思った。

 担任の産休が開けて、代理の先生が居なくなると、私は牛乳を持ち帰った。


 牛乳を頭からかぶる記憶はよみがえらなくなった。
 罪悪感もなくなった。
 授業も集中出来る様になった。

 担任は私が牛乳を持ち帰る事には、何も言わなかった。
 代理の先生は「食べ物を捨てる罪悪感」を私に教えてくれた。
 私は今も牛乳を頭からかぶった記憶と、牛乳を捨てる記憶と、飲んだときの気持ち悪さが忘れられない。




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