文字数:約728文字
それは新学期が始まって、一段落した頃。
変な緊張感も戸惑いも消え去って、クラスに慣れきってしまっていた。
そうなると、ふざけた事をする子も出てくる。
掃除の時間だった。
一人の男子が「魔女っ子○○○」と言いながら、箒 にまたがっていた。
「ふざけないで」という女子の言葉なんて聞きはしない。
みんなが、またいつものおふざけだと思っていた。
ふざけている男子を放っておいて、皆がそれぞれ掃除を進める。
掃除も半分以上終わった頃。
ガシャーン
唐突にガラスの砕ける音が教室に響いた。皆が、音の鳴った方を振り返る。
そこにいたのは、血まみれの姿になった箒にまたがっていた男子。
誰かが先生を呼びに職員室に走っていく。誰かが男子に駆け寄っていく。
けれども、ほとんどの子がどうしていいのか分からずに、動けなかった。
男の子からは血が大量に流れているように見えた。
やってきた先生が「何があったの?」と言いながら、男子の怪我 の様子を確かめる。
保健室で済む傷ではない。救急車がやってきて、男の子は運ばれて行った。
先生たちがガラスの大半を簡単に片づけた。
「ガラスの破片に気を付けて、掃除を続けて」
拭き掃除をしていると、鋭いチクチクした感触が手に当たった。
細かいガラスの欠片は、数日間、雑巾に引っかかった。
割れたガラスの代わりに、一時的に段ボールが窓にあてられた。
次の授業は少しだけ遅れて始まった。
男の子はしばらく入院することになった。
そして、箒 でふざけることはしないようにとクラス中に注意がされた。
退院した男の子は皆に「馬鹿じゃないの?」と迎えられた。
大きな後遺症もなく『バカじゃないの?』で済んだので、この話はこの先も笑い話として時々話題に上った。
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