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✞ 14話 雪かき ✞

2023/02/15
文字数:約649文字
 少ない積雪ならば、先生たちが雪かきを済ませる。
 けれど、雪国では大量の雪が降る。雪かきは上級生の仕事として回ってくる。
 休憩時間や朝の時間など、なるべく授業ではない時間に雪かきを済ませることが多かった。
 休憩時間に雪かきをするのだから、必然的に遊ぶ時間が減る。
 その事に文句をいう人たちもいた。

 私はそれほど苦ではなかった。

 一人黙々と雪かきをして、気が付くと一人だけ先に終わっていた。
 一人で先に終了するわけにいかないので、他の人の場所をやった。
 で、なぜか「すごいね」と言われる。
 寒い中でゆっくりと過ごしたくないから、早く終わらせようとした結果、なぜか褒められた。


 そんな冬のある日。
 先生が、「男子だけ雪かきをしろ」と言ってきた。
 もちろん男子たちはブーイングである。
「何で俺たちだけ?」
「女子、ずるい」
 先生はそれにこう答えた。

「おまえら、男だろ。力があるだろ。そんなに人数がいらないから、おまえらだけでいいんだ」

 外の雪は、それほど多くはない。人手ひとでもそれほどいらない。
 けれど、先生の言い方には納得が、いかなかった。

 ほとんどの女子が「やった」「ラッキー」と言っている中、私はザラッとしたものを感じた。
『女には力がない』『女は役立たない』『女は力仕事をしなくていい』
 それは、弟の誕生以来、感じていなかった感覚だった。

「次は女子にやってもらう」だったなら、ただの順番だと思えた。
 けれども、先生は『力がある男子』にだけ頼んだのだ。
 私はその違和感が何なのかを、大人になってから知った。




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