文字数:約1150文字
高校の教室で私は、一人だった。
3年に一度の文化祭があった。各教室が出し物を出す。就職コースだった私のクラスは、進学コースとは違って『お金』を扱う事が出来た。
けれど、お金はいろいろと面倒なので『お化け屋敷』に決まった。
「今日、皆で作るからね」
と言う声を、聞かなかった事にして、一人でさっさと帰った。
次の日、「何で帰ったの?」と、文化祭をやる気満々の生徒に怒られたうえ、帰らないように監視までされた。
「これ、塗っておいて」
と作業が与えられたので、とりあえずそれを終わらせて、帰った。
それ以降は、特に何も言われなかった。展示物がほぼ仕上がったからというのもあるし、呆 れられたというのもある。
協調性と言うものを放棄した私は、別に嫌われても、呆 れられてもかまわなかった。
高校生にもなって、プリントを飛ばすなんていう古典的ないじめも起きないだろう。
裏で何かを言われていても、私の耳に入らなければ、それは『なかった』ことになるのだから。
人間不信が極まっていた私に、怖いものはなかった。
教室の『お化け屋敷』が完成したのは見なかったので、どんなものがあったのか全く分からない。
文化祭当日は、相談室に入り浸ってこたみちゃんと雑談をしていた。相談室を出なかったので、文化祭の様子は、知らない。
後から、家族に聞いて、「そうだったのか」と知った。『お化け屋敷』もお化けと言うよりも、がらくた屋敷に近かったらしい。
恐竜などがあって、よく分からなかったと家族は言っていた。
文化祭が終わってしばらくすると、クラスでバーベキューをする事になった。
場所は学校だと伝えられたが、学校でバーベキューをするような場所なんて記憶になかった。
私の中ではどうやって、そのバーベキューを辞退しようかという考えしかなかった。
学校の昼食 でさえ、気持ち悪いのに、皆で食事はありえなかった。
バーベキューの前に、ちょっとした作業があった。中庭に集まって、何かをしたが、何をしたのか忘れた。
それが終わった人から、バーベキューへと向かう事になっていた。
私はゆっくりと作業を終えて、皆が消えるのを待った。
皆が消えて、自分の作業を終わらせて、皆が向かった方向とは別の方へと方向転換したところで、クラスメイトが来た。
「みんな、待っているよ」
困った。消える計画が消えた。
これが、女生徒ならば適当に「トイレに行ってくる」とでも言える。
けど、悪意のない男子生徒……今ここで、私が消えたら「あいつどこに行った?」と言い出しかねない。
というか、誰かがそう言ったからここに来たのだと思う。
私は仕方なく、男子生徒の後に続いた。
紙皿と割り箸を渡される。ため息しかない。
私は勧められた分だけを取って、皆からなるべく離れて食べた。
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