編集

✞ 16話 転校一名 ✞

2023/02/16
文字数:約707文字
 入学してすぐに話しかけてきた子が居た。
 その子と仲良くなることはなかったし、私に話しかけてきた理由もよく分からない。
 大人しくて、扱いやすそうと思われたのかもしれない。

 私はクラスではほぼ誰とも話さない学生生活を送っていた。
 それまでは、何だかんだと声をかけてくれたこたみちゃんもいない。
 特に話したい人がいる訳でもなければ、親しくなりたい人がいる訳でもない。
 それまでも話さないことが多かったけれども、保育園に戻ったのでは?と思うくらい誰とも話さなかった。
 一つだけ違うのは、『必要最小限』は話していた事。
 話しかけられれば答えるし、当てられても答える。それ以外は用事がない限り、話さない。
 友達が居ないという事は静かで落ち着いた日々で心地よかった。
 唯一、グループになる時だけは困ったが、それもしばらくすると、無理やり押し込まれるグループが決まった。

 2年になると、クラスメイトの一人が転校していった。
 最初に話しかけてくれた、病気をして一年留年していた子だった。
 特に誰も気にしていなかったし、気にしなければ気が付きもしない1年の差。
 成績が悪かったからだとも言われていたけれども、実際のところはどうなのか分からない。
 ただ、彼女は担任が顧問をしている『女子運動部』に入っていた事が少しだけ気になった。
 もしかしたら、運動部で何かあったのかもしれないとまで頭に浮かんだ。
 彼女は部活では活躍していたという事もうわさで知っていたからだ。
 彼女が抜けたら、部活は大きな戦力の一部を失いのではないのだろうか?なんてことまで思ってしまった。

 何が事実なのかは分からないが、とにかく2年になって一人クラスメイトが減った。




<<前  目次  次>>