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インプロの講座に行ってみた。インプロとは即興演劇の事である。
演劇に興味があったわけではないが、物語と声の役に立たないかと思って行ってみた。
人数は少ないが、ほとんどが顔見知りらしく『常連』が多い事が分かった。
最初は簡単に自己紹介。その後に、簡単なお題が出される。
最初は本当に簡単なものだったが、すぐに私が喋 れない事で進行が止まってしまった。
「選ばれた人からイメージできるものを答える」
それぞれが順番に一人一人に対して答えていく。
私は何も思いつかなかった。
「何か、思いつくものはない?」
そう言われても、出てこない。いや。いくつか頭の中で出てくるが、どれが答えなのか分からない。
長い沈黙の後、「桃色なイメージ」と答えた。
その後のお題が私に合わせて、『私が話さない』ものに変わった。
『事故で動けなくなった娘』役を私がやり、長くインプロをやっているという人が『父親』役をやり話しかけるというものには、困った。
何もしなくていいのだが、何かしなくてはいけないようなむず痒 い感覚でその場にいた。
他には、『ヤクザに求婚される娘』役なんてものもあった。
婚活で新しい男を見つけて、ヤクザを振ろうと思い立った娘役で、婚活で男が見つかったシーンから始まる。
ヤクザと男が揉 めて、力があり喧嘩 に負けないと言っていた男が実は無力でひ弱だと知る。
設定がめちゃくちゃすぎて、私の頭ではついていけなかった。これは『したたかな娘』なのか『素直な娘』なのか。
娘の設定は世間知らずのお嬢様だったが、それが素なのか表なのか。
「無力な自分でも結婚してほしい」
告白をしてくる男に、娘は何と答えるか……を自分で考えてと言われて、散々迷う。
腹黒娘?天然娘?どっちなのだろうか。
考えた結果、「はい」と答えた。
私の中では、天然娘が勝ってしまったのだ。
これは貴重な体験で、私は『腹黒』にはなれないんだなと思った。
しばらくすると、講師の一人が妊娠をした。
それを受けて、『赤ちゃんはまだ言葉を知らない。言葉を発さずに手を叩 く事で、何かをさせる』というものをやった。
答える人は、妊娠した講師。
お題は『歌う』
他の人たちは講師が『歌う』に近い行動をすると、皆で手を叩 いて知らせる。
これは、伝えるのが大変だった。最初は何かを話す度に手を叩 いていたのだが、講師はずっと何かを喋 っている。
すると、『何をして手を叩 いているのか』が分からない。
最終的に「分からない」と言う事で、終わった。
言葉を使わずに伝える事が、こんなに難しいのかと思った。
講師が妊娠して講座の場所も変更になったので、インプロも行かなくなった。
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