文字数:約746文字
地元にいた頃に、地震が起きた。私が住む県は、めったに揺れる事がない。その地震も県内はほとんど揺れず、隣の県で大きな被害が出た地震だった。
翌日は『仕事中に地震にあったら、どうするのだろうか』と同僚たちと話し合っていた。
それを耳にしたのかどうかわからないが、さらに次の日に上司が言った。
「地震になったら、各々の判断で逃げていい。こっちに確認をとらなくていいから」
つまり、会社は何もしてくれないのだ。そのつもりで仕事をしていいという事なのだと思った。
それからしばらくして、更衣室で他の部署の人の話を聞いた。
「ありえないんだよ!!」
その子は怒っていた。着替えながら、話を続ける。
「火災報知機が鳴ったの知っている?」と聞いてくるので、私は知らないと答えた。シフトがずれていたせいか私は、火災報知機の音を聞いていなかった。
「鳴ったの!何も聞いていないから、皆どうしようって顔をしていたけど、逃げる事にして部屋を出たの。そしたら、上司が来て、『何やっているんだ。戻れ。ただの点検だ』って言ってさ。それ、最初に言えって話。こっちは何も聞いていないのに、ひどいよね」
さらにここに、『クリーンルームなのに、ひどい』と続く。
クリーンルームとはつなぎの服で入る場所だ。出入り時の着脱が大変なのだ。
「自己判断で逃げろって言ったじゃん」
彼女の怒りは溢 れてくる。数日前の『自己判断』という言葉はどこへ行ったのか。これはただの点検だったけれど、本当の火災だったらと思うとぞっとする。
この会社を退職後に働いた別の会社では『避難訓練』があって驚いた。
大きな会社はちゃんと避難訓練があるという事を知った。けれど、避難訓練は避難訓練で面倒だが何かあった時を考えれば、安心感がある。
会社によって、いろいろある。
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