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日本ではタバコとお酒は二十歳からとなっている。それが変わる事はないと思う。
現実はそうではないとしても。
親が良しとしているのならば、親族間で未成年がお酒を飲むという事はあると思う。そうではなくても、仲間内だけでこっそりというのもあるのだろう。
職場でその子は無邪気に話しかけてきた。
「喫煙所で、担当さんがタバコをくれたの。優しいよね」
一瞬、何を言っているのか分からなかった。
彼女が未成年なのは、一緒の派遣の人達はみんなが知っていた。その彼女の口から『喫煙所』という言葉が出てくる。担当は確か、成人済みだったはずだ。
未成年が会社でタバコを吸っている衝撃。大人が未成年にタバコを渡す衝撃。
真面目に生きてきた私には縁のないシチュエーションだ。
「そ……そっか」
何と答えていいのか分からず、私の声は上ずってしまった。
彼女は無邪気に私にも喫煙を勧める。
「喫煙所でみんなでお喋 りするの楽しいよ」
「タバコは苦手で……」
私は引きつった顔で、彼女と話していた。
後から、他の人に確認してみると喫煙者は皆が知っている事だった。
誰も彼女を追い出さないし、中には「働いているし、もう18だし別にいいんじゃない?」とまで言う人もいた。非喫煙者も、「本人が良いなら、それでいいと思う」で終わった。
私は、私の感覚がおかしいのかと思ってしまった。
確かに職場なので、私も言い辛い。
この状態では『おかしいよね』と声を上げた側が、おかしな人間になってしまう。わざわざ仕事で軋轢 を生みたくが、モヤモヤした気持ちは残る。
「嫌なら見なきゃいいんだよ。喫煙しないんだから、喫煙室に近づかなければいいだけだよ」
モヤモヤすると伝えるとそう返ってきてしまった。それが正しい大人の対応なのかもしれないが、気持ち悪くて仕方がない。
しばらくたつと「みんなで飲み会をしよう」という話が出た。
未成年者がいるのはどうするのかと思ったが、皆の中では「黙っていれば分からない」という話で収まっているのが透 けて見えた。
私も参加をするかどうか尋ねられたが、返事をしないうちに私は省かれていた。
ノリが悪いと思われたのか、合わないと思われたのか分からないが、それでいいと思った。タバコは会社内の事なので、目を瞑 る事も出来るが飲酒は外だ。お店の人にも迷惑がかかるし、厄介事に巻き込まれたくもなかった。
黙っている気なら、職場でも年齢を黙っているか誤魔化 してほしい。
年齢を正直に答える必要はないと、未成年の人たちには言いたい。大人は大人というだけで、未成年の尻拭いをしなければいけない。良識ある行動の結果ならばまだしも、愚者の尻拭いはしたくはない。
※2022年4月から18歳成人になりましたが、この話はそれ以前なので20歳成人でした。
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