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ビアンチャットで、気が合ったのが巴 さんだった。寝る時間を削るくらい話し込んでしまった。
会おうという話をしたのは私の方だった。ただ、私は関東で巴さんは四国、簡単に『会う』というわけにはいかない。
話を振っても、いつも「いつかね」と流されていたし、私も別にそこまで本気ではなかった。
それが会う段取りになったのは、巴さんが大阪で研修があると言うからだった。研修と言っても仕事ではなく、趣味のものだった。
私は私で、趣味の講座に参加するために大阪行きを決めた。大阪で、会おうという話で終わると思っていた。
「じゃぁ。その後、うちに来る?」
「え?」
驚いたのは私の方である。『家に来る?』という事は、大阪から足を延ばして四国に渡るという事だ。
さすがにそこまでは考えていなかった。即座に交通費が頭に浮かぶ。
「研修にはバスで行くから、そこに乗ってきたらいいよ。いくらかかかるケド、電車やバスより安いはずだから」
その言葉につられて、行く事に決めた。次はどのくらいの期間かと言う事を考えなくては行けない。
「何日くらい、お邪魔していいの?」
「三日でも一週間でも、好きにどうぞ」
仕事もしていないので、一週間滞在に決めた。
巴さんは一人暮らしで、おうちにいるのはワンコ1匹という情報はすでに得ていた。不安しかないが、冒険をする事にした。
巴さんは年齢非公開だったが、「ノアちゃんが思うよりは年上だと思うよ」と念押しされた。
私の中では四十代ぐらいという予想で、会ってみてもそんなものかなと思った。
とにかく、親より年下で私より年上だと念押しされた。……幅が広くて分からない。
会ったとたんに幻滅されるのは避けたかったので、念押しをしたのだろうが、私は相手の年齢はどうでも良かった。
毛玉セーターでなければ、顔の造形などは二の次だと思う。
巴さんに会った印象は、イメージしたものとさほど変わらなかった。服装も毛玉セーターではなく、小奇麗に整えられていた。
巴さんのお友達にも会った。最初はお友達さんも含めて、お店に入ってお話しした。
お友達さんはオシャレな人で、おそらく巴さんのコーディネートは彼女が決めたのだろうと思った。
私の方はと言えば、「お喋 りが苦手」と先に言っておいた。
チャットでは普通に話すが、現実の私は全く喋 れない私だ。
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