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✞ ×4× ✞

2022/05/12
文字数:約737文字
【 買い物 】
いつからだろう。
給料が入ったら、買おうと思った。
3月に買いたいと強く思った。
けど、本当は入社した時から欲しかったのかもしれない。





4月7日(水)

特別、欲しいと思ったわけじゃない。
ただ、電車の待ち時間があったから。
暇だったから。

駅前のコンビニに入った。

嫌な事があったわけじゃない。
欲しかったモノに気が付いただけ。
給料が入って、ちょっと手を伸ばしてみたくなった。
ためらった。
どうしようかと店内をぐるぐる回った。
美味しそうなお菓子に目が行った。
とりあえずの予算と照らして、買いたいものが決まった。
……。

幾つかのお菓子と一緒に、
その物騒なものをレジへと持って行った。

普通に考えれば工作用。

ただ、私はそれを工作用に使う気は無かった。

もっと別の事。


買ったお菓子は兄弟で分けて食べた。
欲しかったのはお菓子じゃなく、異質なそれ。



せっかく買ったもののそれは使う事は無かった。
使う気はあったけど……それを使う必要が無かった。


とりだしたのは、1週間程たった後。
乱雑な部屋から思い出したように、それを取り出した。



4月13日(水)

会社のお花見だった。
私は必要の無い大きな重い鞄も持って行った。
会社の人は置いて来たらと言ったけど、持ってきた。
その鞄を私は抱く。
握り締めて心を抑える。
微かな安心。
そうして、やっと手放す。
おまじないの一つ。
他にも「~趣味の会報~」をお守りに入れてた。

心を保つ為のクッションを作らなければ、
私はその場所に要られなかった。
周りはそれに気づかない。
私自身もそれに気づいてなかったのかもしれない。


この頃、「変わった」と言われるようになった。
「明るくなった」と会社の人に言われた。
私自身は「?」だった。
実感が無かったのだ。

だけど、そう言われるたびに漠然とした不安が広がった。




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