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✞ ×7× ✞

2022/05/12
文字数:約1182文字

【 壊れはじめる 】

5月27日(木)

会社の人とカラオケに行った。
最初はミーティング。
誰と誰がお昼どの企業に行くか。
そう言った話。
よく判らないけど、今までの出張所から分かれて
指導者さんが新しく所長さんになって、私ともう一人とえむちゃんで一つの出張所になった。
(ごめんなさい。本当にわかってないです・汗)

その場所で、次のミーティングに私はいないだろうと思った。

その後カラオケ……
最初に私が歌った。いつもの曲。
終わった後、私は小さな鞄を握り締めた。
大きな鞄は置いておいでと言われて置いてきてしまったから。
でも、今はこの小さな鞄でよかった。
鞄の中に手を伸ばす。
ティッシュで包んだ刃が手にあたる。
握り締める。
そのまま、トイレでも行って切ってしまおうと思った。

行こう……思って握り締めて……止めて。
繰り返す。

そして、時間が来て終了。

結局、切らなかった。



5月28日(金)

いつもより寝坊した。
間に合わないと思った。
一応、駅まで歩いた。

……。

電車は歩いてる途中で行ってしまった。
追いつく気は全くなかった。
家に戻ろうかとも思ったが、駅に行った。

どうしようかと思った。

とりあえず、所長にメールを入れる。

「電車に乗り遅れました」

それだけ書いた。


次の電車が来た。
乗らなかった。

何人か降りてきて、不審な顔で私を見て行った。


私は駅で座っていた。
今にも壊れそうな木のベンチに。
少し動くだけでギィと嫌な音を立てる。

そして、刃を取り出した。
腕に当てる。
何度もすじをつける。

朝の時間を過ぎれば、この駅に来る人は少ない。
30分間隔でしか来ない電車。
少ない利用客。
無人駅。

私がここで何をしていても、気にする人はいない。
人が来たら、少し隠して……


しばらくすると声をかけられた。
「街まで行くの?」
ドキリとした。
傍に座った見知らぬおばさん。
私に向けられた言葉だと理解するのに3秒はかかった。
「あ、はい」
「社会人?」
「え、はい」
聞かれて戸惑った。
普通の社会人ならこんな時間、こんな場所にいない。
その後は沈黙。

電車が来て、その人は行ってしまった。

電車に乗る気もない。
連絡する気もない。
あー、やばい。
無断欠勤しちゃった。

携帯の電源はとっくにOFFにしてある。
煩わしかった。

切って切って切って……
腕が赤くなる。

そのうち風が吹いてきた。
朝は雨だったのに晴れてきた。

ぼんやりとそんな風に思った。

切るのを止めて、ボーと座って外を見ていた。
絵を描きたくなって、紙とボールペンを取り出した。

描いて描いて描いて。

描いた後、紙を破り捨てた。


1時過ぎ……会社の人が来るとしたら1時前ぐらい。
もうそろそろいいかな。
気もすんだし。

家に帰ることにした。

靴を脱いで、裸足になって。
アスファルトの感覚が足に伝わる。
気持ちよかった。


家では、母が心配していた。
所長も家に来ていたと聞いた。

会社に電話して、所長に電話して……

次の日が休みで良かったと思った。




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