文字数:約1205文字
学校までの道のりは長かった。
まずは私の家の前で、一旦数人が集合。その後に、また別の家の前で数人が集合するのを待っていた。
家の前ならば、呼びに来てくれるまで家に居ることも出来た。
けれども、もう一つの集合場所では、待つしかない。
しばらくは大人しく待っていたけれども、いつからか、つまらなく感じる様になった。
そして、暇になった私は『人を叩 く』
同級生を叩 くのはなぜか気が引けた。叩 く対象は年上の子達。
「やめて」
と言われて、すぐやめる。やめるけど、次の日には同じことが、また繰り返される。
それが数カ月ほど続いて、飽きたのでやめた。
たぶん私の中には、「人を叩 いてもいい」という感覚が刷り込まれている。と、振り返って思う。
***
その日もいつもと変わらない朝だった。
家の前の車庫でみんなを待っていた。
やがて、遠くから上級生や従姉妹がやってくるのが判る。
田舎なのであまり車が通らないとはいえ、通勤時間帯には少しだけ交通量が増える。
家の前の交差点には、信号機が無い。
道路の向こう側の従姉妹たちは、いったん立ち止まって、車が途切れるのを待っていた。
私たちも、こちら側で従姉妹たちが来るのを待っていた。
唐突にガシャンと音が響いた。
音がした方を向くと、車が折り重なっていた。
止まるのかなと思ったそれは、真っすぐにこちらに向かってきた。
そして、そのまま車が従姉妹たちめがけて、突っ込んでいった。
従姉妹たちは、道路の向こう側の田んぼの中に消えて行った。
田んぼは道路よりも一メートル近く下がっている。
近所の人達が音を聞きつけて、出てきた。
その中には私の親もいた。
「救急車だ!!」「大丈夫か?」「けがは?」
何人かの男性が田んぼの中に入って、車を持ちあげようとしていた。
声が飛び交っている中、目の前で起きたことが飲み込めず、ぼうぜんと立ち尽くした。
どうしたらいいのか、わからなかった。
「あんたたちに、けがはないんでしょ。学校に行きなさい」
そう言われて、学校へと行った。
けれども、頭の中は授業どころではない。
車に飛ばされた従姉妹たちはどうなったのか?それが気になって仕方なかった。
家に帰ると従姉妹たちは大けがをしたが、命に別状はないと聞かされた
苗を植えたばかりの田んぼは、苗が潰 れてダメになってしまった。
けど、水を含んだ柔らかい土 がクッションになって、従姉妹たちが潰 されてしまうことはなかったらしい。
最初に聞いた音は、車庫から出てきた車 と直進してきた車がぶつかった音だった。
そのまま直進車 は車を押して、こちらに向かってきて、従姉妹たち をなぎ倒したのだった。
スズメちゃんたちは、しばらく入院した。
低学年しかいなくなった私の班は、他の班と合流して登校することになった。
一歩間違えば、車は道路のこちら側に居た私たちの方に来たかもしれないと思うと、ゾッとしてしまう。
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