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✞ 10話 クラスメイトの死 ✞

2023/02/15
文字数:約717文字
 クラスメイトが死んだのは、連休明けだったと思う。

 その日、先生が暗い顔で教室に入ってきた。
 いつもは明るい顔……とは言えないが、その日はいつも以上に、重苦しい空気をまとっていた。
 いつものようにうるさい生徒を怒鳴りつけて、何とか静かになった教室の中。

「今日は大切な話があります。××君が亡くなりました」

 クラス中がシンとなって、その子の机を見た。
 あるじのいない机は、ただ風邪を引いて休んでいるだけのようにも見える。

「お葬式は……」
 先生の話はほとんど頭に入って来ない。
 昨日までクラスに居た子が、今日は居ない。いや。この先もずっといない。
 親しかったわけではないけれども、保育園から一緒だった子だ。
 何とも言えない気持ちがクラス中に漂っていた一日だった。
 お葬式後には、遺族からクラスメイトにハンカチが配られた。

 けれど、そんな空気もすぐに消え去った。
 先生は死んでしまった子の机に花を置いた。
 それが、『死者に対するもの』ということをクラス中が理解した。
 次の日には、『机に花瓶を置く』という嫌がらせが起きた。
 置かれた子はもちろん、気分は良くない。
 クラスメイトの死はあっさりと『いじめの一つ』へと変わってしまった。

 花瓶を置かれた子は黙って片づける。
 机がれていたら拭いて、それでおしまい。
 お嬢様がその様子を笑ってみているだけで、それ以上何もない事を知っているから。
 時には「来ないから、死んじゃったのかと思った」なんて、風邪をひいて休んだ子の机に置かれる事もあった。
 風邪を治して登校すると、花瓶が机にある。
 そうやって定番の「いじめ」の一つとなった。

 (クラスメイトが死んでしまった原因は、いじめとは関係のない事故です)




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