編集

✞ 11話 鬼ごっこと賞 ✞

2023/02/15
文字数:約998字
 少し長めの休み時間は校庭に出ることが決まりだった。
 校庭に出たからと言って、何かをするわけではない。
 かと言って、壁の花になっていようものなら「もっと遊んできなさい」と先生に追い立てられる。

 休み時間なのに、休んでいてはいけないその時間を持て余していた。
 他の子達はさっさと校庭に出て遊んでいる。
 自分から声をかけることが出来ない私は、先生の動向を見ながら校庭を適当に動き回っていた。
 やがて、一人のクラスメイトが声をかけてきた。

「鬼ごっこしよう」

 二人きりの鬼ごっこをした。
 私は運動音痴で足が遅い。すぐに捕まる。そして、クラスメイトの事はなかなか捕まえられない。
 ほぼ私が鬼になる鬼ごっこだった。
 しばらくは楽しく遊んでいたのだけれども……『鬼』ばかりなのはさすがに嫌だ。

 数日たつと私は「もう嫌」と、相手に鬼ごっこの拒否を伝えた。
 そうすると、相手は私のはちまきを取って「もらった」と走り出す。
 はちまきを人質に鬼ごっこが繰り返された。

 そしてさらに1週間ほど過ぎた頃、それを見ていた別のクラスメイトが「やめなよ」と注意をして来た。
 それ以降、鬼ごっこに誘われる事はなくなった。

 正直、なぜ彼女が私と鬼ごっこをしていたのかよく分かない。
 彼女は成績優秀な真面目タイプ。
 友達なら他にもいたと思うのだけれども、なぜ私だったのか……考えても分からなかった。
 ついでに、別に彼女は私をいじめていたわけではない。
 はちまきは必ず休憩時間が終わると返ってきたし、それ以外は何の接触もなかった。


***
 図工の時間に絵を描いた。
 たぶん、昔話をイメージして絵を描けという事だったと思う。

 私は、『かさこじぞう』の絵を描いた。

 単に面白い絵にしたいためだけに、障子に目を描いた。
 家の向こうから地蔵がやってくるのを、家の中の爺様と婆様がのぞいている絵だったと思う。

 その絵が、賞を取った。
 何の賞だったか忘れたが、クラスに数人がとるような賞で珍しいものではなかった。

 ただ、いつもならその賞はいつものメンバーに送られるものだったと思う。
 それが、その時に限って、『いつも賞を取る人たち』とは違う子達が入っていた。
 後からそれが、「他の子にも、賞をあげようという事になったんだって」という、うわさが入ってきた。
 だから、いつものメンバーではないのだと。
 私は、そのうわさに納得してしまった。
 真偽は分からない。




<<前  目次  次>>