文字数:約1350文字
☆番外☆ もう一つの死
クラスメイトが亡くなってしばらくした頃。
いとこの祖母が亡くなった。
話によると、昔ながらのきつい人だったのだとか。
母に連れられて、私とほっちゃんはお通夜に行った。
学校ではない場所に制服で行くのは不思議な感覚だった。
皆が黒い服を着て、厳かな雰囲気が漂っていた。
いつものホタルちゃんの家ではなかった。
母について行って、真似 をした。
意味は分かっていなかったけれど、初めて死んだ人の顔を見た。
よく知らないそのお婆さんの顔は、白かった。外で降っている雪のように白かった。
母はそそくさと私たちを連れて、家へと帰った。
はーちゃんとくーちゃんは小さいからと、連れては来なかったらしい。
死んだ人は白い肌になる事を知った。
☆番外☆ プレゼント
ある年、クリスマスプレゼントを母が買ってきた。
母は、私と妹たちに三体の人形を目の前に差し出した。
「好きなものをとって良いよ」
三体のうち二体がドレス。一体が普段着だった。
母の思惑は上の二人がドレスを選んで、一番下が普段着を選ぶだったのだろうと分かった。
けれども、母の思惑とは違って妹たちはドレスを選んだ。
私は残った普段着のお人形を取った。
お人形が欲しいと言った覚えもなければ、欲しいと思った事もなかったが、不満しかなかった。
不満しかなかったが、母が私たちのために買った事を分かっていて、不満を言えるような子供ではなかった。
母は私の不満が分かったのか、もう一体ドレスの人形を買ってきて私に渡した。
けどこの行動もまた、私には不満だった。
私はすでに普段着の人形の服を脱がせて、ハンカチを好きな形に巻いて遊ぶという事で十分楽しんでいたからだ。
最後のドレスの人形では、私はまったく遊ばなかった。
服を脱がせたまま、着せるわけではなくハンカチを巻いて遊んでいた私を見て
「服を着せないのなら、この人形はお母さんが使うからね」
と、最後の人形は母のものになってしまった。
母はたぶん、三人仲良く服を交換して遊んだらいいと思ったのだろう。
現実は理想とはかけ離れて、皆がそれぞれ自分の人形だけで遊ぶという結果になった。
もう一つ、母が私たち3人にまとめてプレゼントしてくれたものがある。
水泳バッグだ。
私と上の妹は小学生、下の妹は未就学児だった。
これもまた人形と同じく、二つがシンプルな単色のバッグ。一つがキャラクターの描かれているものだった。
母の思惑もまた、人形の時と同じなのだと悟った。
そして結果は人形の時と同じく、妹たちがシンプルなものを選んで、私が残ったキャラクターものを使う事になった。
さすがにこれは使いづらかったが、別のモノがいいとも言えなかった。
『家にはお金がない』を無言で理解していたからだ。
これもまた、母が後から妹たちの物と似たバッグを買ってきて私に渡してきた。
そしてその時に、「はーちゃん が、キャラクターを選んでくれると思ったんだけどね」とぽつりと零した。
人形の時とは違って、私はこのバッグにすぐに替えた。
キャラクターものは使われずに仕舞われてしまった。
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