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✞ 14話 教育実習生 ✞

2023/02/15
文字数:約1291文字
 教室に教育実習生が来た。
 元気で若く、はつらつとした感じの教育実習生は、担任と比べるととても真面目に見えた。
 もちろん、担任だって初めからこんな『手抜き』だったわけではないのだろうけれども。
 ちょうど実習の時期に高校総体があった。
 私たち一年生にとって初めての高校総体で、何をどうしたらいいのかは全く知らない。

 教育実習生は紙を配った。
 『部活の人は部活で行く場所に、応援に行く人もその場所に、行かない人は学校にチェックを付けて』
 と説明をした。

 つまり、応援はしたい人だけが行くものという感じに聞こえたし、そう判断したのは私だけではなかった。
 教育実習生も、そう思ってそう説明をしたらしい。
 担任はそれを後ろで聞いていた。

 が、高校総体当日。
「何で学校に来たの??」と問題になったらしい。
 学校へのチェックは『学校で部活の練習をする人のため』だったらしい。

 つまり応援は強制で、皆がどこかに応援に行かなければならない。
 学校には私以外にも数人が集まっていた。
 教育実習生も来ていて、再び説明があった。
「ごめん。勘違いしていた。今日はここで自習して良いから、明日はどこかに行く事にして。
 で、どこに行くかチェックを付けて」
 唐突にいわれても、そもそも応援場所の高校がどこにあるかを全く把握できていない。

 電車やバスで簡単に行ける場所、なんていうものはどこにもない。ド田舎なので電車やバスの本数も少ない。
 必然的に親に送ってもらうことも視野に入るが、親に言ってもそこがどこか知っているかどうかも分からない。
 唐突に明日、どこか試合をやっている高校に行って……というのは、かなりの無理難題だった。

 紙のリストを見ていくと、受験のために行った高校が目に入った。
 ここならばどうにかなるかもしれないと思って、そこにチェックを入れた。
 が、受験で一度しか行ったことのない高校。
 しかも、その時は中学からバスが出ていたので、公共交通のバスで行ったことはない。
 行ける自信はなかった。

「学校に行くなんて選択肢、自分たちの時にもなかったから、おかしいと思っていたんだ。
 あの時、担任は居たよね?教えてくれたらよかったのに」
 と教育実習生の口からぶつぶつ文句も続いて出てくる。
 確かにあの時、担任もいた。が、恐らく要領のいい担任は全く聞いていなかったのだろうと思う。

 その後、自習をだらだらとやりつつ、教育実習生が唐突に言い出した。
「知っている?明日、××に有名人が来るんだって」
 興味がなかったので、誰が来るのかは忘れてしまった。
「えー?ホント?うそじゃないの?」
 なんて声が、周りから上がる。
うそじゃないって。内密にやってくるんだって」
 意外とミーハーな実習生だなと思った。

 が、もちろんその情報はうそで、後日、担任が
「××に有名人が来るといううわさになって、沢山たくさんの人が集まったらしいが、おまえら行かなかったよな?
 バカだよな、そんなの信じるなんて」
 と、言い放っていた。
 実習生は黙ってそれを聞いていた。

 後になって、実習生が「ごめん。やっぱりガセだったね」とあの日、教室に居た生徒たちに謝っていた。




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