文字数:約809文字
3年生になって、受験の話がメインの日々になってきた頃。
私は専門学校への進学を決めて、準備を進めていた。
けれど、推薦入試を選んだのは書類提出ギリギリのタイミングだった。
書類は学校での記載部分を残して、すべて書いた。
学校で必要な記載部分を書いてもらったら、早めに出さないと間に合わない。
慌てて書いた書類を担任に渡すと、「なるべく早く渡すから」と返ってきた。
『なるべく早く』を私は『なるべく早い日数=明日』と受け取った。
いつものように、放課後には相談室に寄って、こたみちゃんと雑談にふける。
そうしていると、放送で呼び出された。
「何かしたの?」とこたみちゃんが聞いてきたが、思い当たるものが何もない。
とにかく、放送で呼び出されたので、担任の元へと言ってみた。
「おまえなぁ。なんで、教室に居ないんだ。書類を渡せないだろ」
と言われて、「なるべく早く」という意味が『今日中に』という意味だった事を知った。
「すみません……」
と返すも、グチグチとまだ何かを言ってくる。
それを全て黙って聞いていると、
「そんなんじゃ、生きていけないぞ」
と言われた。
それが、私の心に刺さった。
ちょうど受験で不安定だったという事もあるかもしれない。
けれども、その言葉が今まで何度も言われてきた言葉と重なって、私の心を押しつぶしてきた。
「もう、いい。事務室に書類は用意されているから、取りに行け」
担任は言いたいだけ言って、私を解放した。
私はもう事務室に行く気力が削がれていた。
明日にしようかなと思ったが、それはそれでまた何かを言われそうだなと思った。
結局、事務室に書類を受け取りに行って、相談室に戻った。
「何だったのー?」
こたみちゃんがいつもの声でそこにいた。
「書類、できていたって」
「よかったじゃん」
笑顔でこたみちゃんが言う。
「うん。よかった……」
こたみちゃんが良かったというので、良かったことにしようと思った。
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