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守り人さんに話をしてみた。
こちらもこちらで、何だかよく分からないゴングが鳴ったようだった。
守り人さん:そっか。そう言われたんだ。
画面では表情が見えるわけがないのだが、言葉が痛い。
守り人さんとしては、至って普通のお誘いのつもりで他人が口を出してくるとは思ってもいなかっただろう。
守り人さんには会長様の事をポチポチ話した事はあるが、そんなに詳しくは話していない。
得体のしれない人間に横やりを入れられて、面白くないという感じは伝わってきた。
私が子供扱いされているというのだけは理解できた。
つまり、私の認識力・判断力・その他もろもろが信用できないというのだろう。
実際に不安定な自覚があったので、それを言われると反論が出来ない。
時間を合わせて、三人でメッセンジャーアプリを使ってやり取りをすることにした。
時間になる前に、二人のログインを確認して少しだけ話す。
会長様:そろそろ時間だね
ノア:うん
守り人:安心できるって信じてもらえばいい
私が二人共と繋 がっているので、三人で話せるように呼び込む。
その後は黙って、やり取りを見ている。
会長様が守り人さんの人柄を探りつつ、私の状態をどこまで守り人さんが把握しているのかも探っている。
守り人さんは守り人さんで、『毎日話しているんだから、タナトス の事はわかっている』と言うようなことを返す。
いや。分かっていないよね?と突っ込みたいのを、ぐっとこらえた。
守り人さんの目的は一つしかなかった。
『タナトス )と一緒にコンサートに行く。その為に会長様を論破しなくてはいけない』
対して、会長様は状況把握に努めていた。会長様の目的も一つ。
『ノアちゃんの安全を確かめるために、守り人さんの人柄を知る事』
目的が一切交わらない話し合いは、時々ずれた話になっては軌道修正して……という感じだった。
会長様:行くか行かないかはノアちゃんが決める事だから
最終的に会長様の言葉で、守り人さんと会長様の話は終わった。
……終わった後も、私は二人と別々にやり取りをしていた。
会長様:ノアちゃんはどう思った?
ノア:えーと。うーん
正直、分かっていたけれども、直球を投げるときつくなってしまう。言葉を探して、見つからずに困っていた。
会長様:悪い人じゃないよね。でも……なんていうか…執着心が強い?
ノア:ああ。それは何となくわかってました
無難な言葉で会長様が言ってくれる。
全てが丸投げだった。
会長様:……決めるのはノアちゃんだから。
でも、止めてほしくて話題に出したんでしょ。私に言ったら、止めるから
ノア:……
会長様:ノアちゃんが行くって言うのは、自分なんかどうでもいいと思っているからでしょ。
でも、違うから。どうでも良くないから。どうでもいいと思っているなら、行かないで
ノア:……はい
見透かされている。そんなことまで言われて、断らずに行くなんて事が出来るわけがなかった。
一方、守り人さんとはこんな感じのやり取りだった。
守り人さん:いい人だね。ノアの事、心配してる
守り人さん:で、コンサートはどうする?
守り人さん:判った。行きたくなかったら、行きたくないで良いから、ちゃんと教えて
守り人さんには、数日後にお断りメールをした。
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