文字数:約904文字
ある日、サークル内のチャットで会長様と他の会員さんがいるのを見つけた。
私は、チャットに入ろうか迷いつつログだけを見ていた。
『会員様:ノアちゃん、大丈夫ですか』
閲覧数は1として出ているが、誰が見ているのかは分からない。
その場所で、私の名前が上がる。
ちょっとドキッとして、会員様の文面を見つめていた。
『会長様:大丈夫かは、分からないケド、ああいうのは構ってほしいだけだから』
え?
私は入室ボタンを押そうかと迷っていた手を止めた。
『会員様:そうですよね。構ってちゃんっていうか……』
チャットの中の会話は続いていく。
『会長様:死にたいって言っているうちは死なないから』
私はウィンドウを閉じた。
ナニ、コレ?
会長様は黙って愚痴を聞いてくれたよね。
……違う。黙る事なんて画面の向こうでは無理だ。
常に喋 る事で、慰めてくれた。
『会長様:もっと、その仕事をする前に止めていたらよかった』
『会長様:傷つけたい気持ちは分かるケド、傷ついたら悲しい』
『会長様:周りはノアちゃんを分かっていない』
ああ。そっか。あれもセリフだっただけだ。
私が可哀想だったから……。本当は聞きたくないのに、無理に聞かせていただけ。
構いたくないのに、無理に構わせていただけ。
私は何も見なかった事にした。
【だって、会長様の言葉は普通の人の、普通の感覚】
そして、あの場に私はいなかった。いなかったからこそ、話せていたのだから。
次の会長様とのチャットは私の中で、モヤモヤが消せなかった。
普通にいつも通りを意識して、なるべくそうした。
モヤモヤしたものは、しばらくは消えなかった。
けれども、それほど経たずに会長様に「もう、支えられない」と言われてしまった。
私は「わかりました」と、それを受け入れた。
悲しかったし、ショックだった。
けれども、『構ってほしいだけ』と思っている会長様が私の傍から離れるのは、当然だとも思った。
私は重い。自分で自分を支えられないほど、いろんなものが重すぎた。
そして、いなくなって初めて知った。
私は会長様が好きだ。それが、誰にも言えない感情だとしても。
ただの錯覚だとしても。
<<前 目次 次>>