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守り人さんを呼びだした。東京近郊だとこんなに簡単に会えるものなのだなと感心してしまう。
会長様には傍に居てもらう事にした。
いない方がいい事は分かっていたが、守り人さんと二人で会う気にはなれなかった。
「要らない」
私は守り人さんにそう言った。
最後を「ありがとう」で終わらせるのは、本当に嘘 くさいなと自分でも思った。
最後の握手をして守り人さんが歩き出す。
黙って見送る……つもりだった。
が、守り人さんの姿が消える前に会長様が話し始めた。
「守り人さん、なんて言っていたか知っている?サンドバックだって」
「え?」
話が見えない。
「二人で少し話したの。で、その時にサンドバックでもいいから、ノアちゃんの傍にいるって」
「……ぶっ。あはははっははは」
思わず、笑ってしまった。
目の端に守り人さんの姿がまだ見える。
ああ。ヤバい。ここで笑っていたら最低だと思いつつ、笑ってしまう。
でも姿は小さいし、声はあそこまでは届いていないかもしれない。
それを願うしかない。
「私はノアちゃんと守り人さんを応援するつもりだったんだよ。なのに、なぜか敵視されて」
敵視された理由はきっと私が、守り人さんと会長様を散々比べたせいだ。
けれども、なぜに好きな相手に他の人とくっ付く様に応援されなければいけないのかと思うと悲しくもなる。
好きとは言っていないのだから、しょうがないのかもしれないけれど。
「サンドバックは……要らない」
私は笑い続けていたが、それを抑えて言葉を吐く。
守り人さんを叩 きたいわけじゃない。人は叩 かれ続けたら、限界が来る。
人間はサンドバックではいられないという事が、彼にはわからなかったのだろうか。
次はどうか、『人間』として傍に居たいと思える相手の傍に、居てあげてください。
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