文字数:約575文字
ある日「チーズケーキが好きなの」と言う話から、誕生日を祝ってもらう事になった。
場所はあの部屋。他の会員様も呼んで、4人ほどが集まった。
会長様がケーキを買いに行ってくれる間、会員は思い思いに部屋で過ごす。
ある人は、棚の上にあった本を取り出して読み始めた。
ある人はお絵かきをし始めた。
ある人は音楽を聞き始めた。
誰かと一緒に何かをすることがないバラバラな状態。
そこに会長様が戻ってきて、笑いだした。
「みんな、自由すぎ。いいね。こーいうの」
皆が自分のやっていたことを片付けて、ケーキの置き場所を作る。
美味しくケーキをいただいて、解散した。
皆がそれぞれ楽しく過ごせた。
けれど、解散後に会長様が気がついた。
「お金、徴収するの忘れてた」
「え?私、払うよ」
「ダメ。ノアちゃんのお誕生日なんだから、それだと、意味がない」
会長様にそう言われてしまったので、出しかけた財布を仕舞った。
その後もお喋 りをしながら、駅への道を歩く。
と、会長様がふと呟 く。
「私は、祝ってもらいたいとは思わないんだけどね。
だって、知らない人に誕生日を知られるなんて嫌だし、相性占いとか診断とかを勝手にされるのも嫌」
聞けない事が増えていく。
知ってはいけない事が増えていく。
どんなに親しくなったと思っても、勘違いしてはいけない。
この距離は……この溝は埋まらない。
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