文字数:約875文字
健康診断で、中性脂肪が高いと判定された。
病気というほどではないが、標準よりやや高めだった。
と、いう話を会長様にした。
それからしばらくして、「ママがママレードを作ったから、分けてあげる」という話になった。
私は、楽しみにしていた。
が、後から「ごめん。ダメって言われた」と会長様から連絡があった。
理由は「中性脂肪が高いなら、それを治して健康になってから。そうでないとダメ」と言う事らしい。
会長様:べつにいいじゃん。それくらいと思うんだけどね。
ノア:……さすが親子ですね。
会長様の親は、会長様そっくりのおせっかいな事が分かった。
プライベートはあまり話さない会長様だったけれども、親の事を話す時は幸せそうだった。
「ドライブに行くと、あの人アレルギーがあるから、お店に入るのも大変。
ソバ粉を使ってなくても、一緒の製造ラインでもダメで。
だから、『ごめんね』って謝られるんだけど、謝らなくていいのにさ」
「そっか。でも、気にしちゃうもんだと思うよ」
私は、淡々と語る会長様のお話しを普通に聞いていた。
「うん……そうだけど……。怒らないの?」
「え?」
「普通は、親に向かって『あの人』なんて言うなって、怒ったり注意したりしない?」
「そうなの?」
私は逆に、ちゃんと親を一人の人間として見ているんだなと思って聞いていた。
『あの人』の言葉の中には、侮蔑も軽蔑もない。ただ、対等な人間という意味しか感じなかった。
そしてまた、別の日。
『大切な人の誕生日だから、無理』というお断りメールを会長様からもらった。
私は思わず、「大切な人って何?傷つく」とメールを送ってしまった。
送った後で、気がついて後悔した。
大切な人って親の事に決まっているじゃないか。
再び、「ごめん。大切な人って親の事だよね。私が間違っていた」と謝罪メールを送った。
そこでもまた、「言わなかったのに、何で分かるの?」と会長様から言われた。
好きな人の大切な人の事が、分からなくて『好き』なんて言えるか。と私は思った。
でも……心臓に悪いので、分かりやすく書いてほしいとも思う。
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