文字数:約542文字
会社の男性にデートに誘われた。コンサートに行く約束をさせられた。 私は行く気がなかった。うっかり、『断るタイミング』を逃した事を後悔していた。
同じ日、コンサートの後に会長様に会う予定を入れた。
こうすれば、コンサートの後の誘いを断る事が出来ると思ったからだった。
けれど、当日はどちらも行かなかった。
連絡がないままというのは、さすがにマズイと思ったので、会長様には連絡を入れた。
「そっか。コンサートには行かなかったの?」
「うん」
「じゃぁ。こっちに直接来る?」
「……ごめん。無理」
体調が悪いわけではない。ただ、何も考えたくなかった。
電車の騒音も、人の喧騒 も、会長様に会うことも、嫌だった。
「え?準備していたのに………」
「ごめん」
悪いなと思いながら、身体は動かない。外出する気力がない。
電気をつける気力もなく、部屋は暗かった。
暗い部屋の中で、会長様との電話が終わって私は携帯を放り出す。
再び布団に突っ伏しながら、一日、何も食べていないなと思った。
気がつくと、朝になっていて、そのまま仕事に行った。
私はこの後も守れない約束をする。
ドタキャンや遅刻は当たり前になってしまう。
人に会う事が、会長様に会う事が、苦痛だった。
<<前 目次 次>>