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✞ ☆番外☆ お祭り ✞

2023/06/25
文字数:約855文字
 ある日、祭りに誘われた。
 プライベートは見せたくないと言っていた会長様の、プライベートな時間だった。

「半分仕事だから、おしゃべり時間があるわけでは、ないけどね」

 そうくぎを刺されたが、具体的にどうこうと言う話はない。
 いつもの中途半端なよく分からない話に、私は乗った。

 約束の場所に着くと、オフ会でいつも会う会長様の友人がいた。
 会長様はまだ手が離せないので、彼が案内をしてくれると言う。
 広場のような場所で、たくさんの人たちがいて、その中に会長様もいた。

「これから、町内を回るの。一緒に来る?」

 会長様の法被はっぴ姿と手に持っている笛で理解した。お囃子はやしで街を歩くのだと。
 ただ、私はそれには馴染なじみがなかった。私の住んでいる地域には、その風習がなかったからだ。

 分からないまま、私は「うん」とうなづいていた。
 けれど、すでに私は疲れていた。ここからさらに歩き回れる自信はない。

 笛の音が、私を刺激する。祭囃子まつりばやしと私の相性はよくない事を理解した。
 休憩場所に辿たどり着いて、さらに説明が加えられる。

「あと、1・2カ所回ったら終わりだから、ガンバッテ」

 その説明は、もう少し先にほしかった。手順が分からず、終わりも分からないのは辛い。
 会長様にとっては、いつもの事で、説明も必要ないのだろう。

 会長様から差し出されたお茶を手に、私は全く知らない場所を見回す。
 お囃子はやしの風習が残っているのは、それだけ人がいるからなのかもしれないなと思った。

 お茶を一口、飲む。ダメだなと思った。
 それまで、飲食は最低限にこなしていたが、人前での飲食がこの時期はダメだった。
 さらに、知らない場所と知らないシチュエーションに私の緊張と不安が高まっていた。
 飲み乾したお茶の味が分からない。これ以上、飲み込める気がしない。

 私はひっそりとお茶を捨てた。


 その後もお囃子はやしについていったが、かなり離れてしまった。
 後から「周囲の人も心配していたんだから」と、会長様に指摘された。

 その様子から、次はお囃子はやしには呼ばれないだろうなと思った。
 ……次はないと思った。




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