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✞ ☆番外☆ 質問 ✞

2023/06/25
文字数:約908文字
 「花火をしたい」と、何気なく言った私の言葉で、「花火をしようか」と言う事になった。

 けど、別にそこまで花火をしたいわけでもなければ、こだわっていたわけでもない。
 昼間に会って、ふらふらとショッピングモールを二人でうろつく。
 オフ会はないので、本当に予定は一切ない。
 何かをするわけでもなく、気がつくと日が落ちていた。


「質問はないの?」


 会長様の言葉に、ぎょっとした。
 それまで、「こんな得体のしれない人間、よく好きになるよね」と笑って話していた。
「それでも、好きだもん」
 と、返して終わるのが、いつもの流れだった。

 質問をかわすのが上手い会長様への質問は、意味をなさないのは分かっている。

 なのに、今、質問を受け付けている事に驚いた。
 と同時に、期待をしていない私もいた。また、いつものようにかわされるだけだと思った。


「何でもいいの?」
「いいよ。答えられるなら」

 何とも言えない返事だなと思いながら、質問をする。


「いつも、朝早くに迎えに来てくれるのは何故?どうやっていたの?」

 私は東京まで朝着の高速バスで来ていた。
 その朝着のバス停まで、会長様は迎えに来ていた。電車の始発も動いていない時間……どうやっていたのか、ずっと謎だった。

「あー。確かに不思議だね。でも、それは内緒で」

 想定内の返事がくる。

「そっか。じゃぁ。もっと簡単に、本名は?」

 会長様が私をじっと見る。
「それ、サークルの会報に載せていなかった?知っていると思うけど」

「……知りたい」
 ちゃんと会長様の口から聞きたい。

「見れば分かるんだから、いいじゃん」

 これもダメか……と思いながら、本当に知りたい質問は答えてもらえそうにないなと感じた。

「他にはないの?もっと、答えられそうなものとか」

 私が今更、『答えられそうな簡単な質問』をすると思っているのだろうか。


「以前、指輪をしていたよね。今、していないのは、何で?」

 会長様は驚いたように私を見つめた。
 しばらく沈黙した後、「気づいていたの?」と聞き返してきた。
 私は黙ってうなづいた。


「うーん。そっか。これも、そのうち話すから」


 今、話す気はないんだなと思った。
 全ての質問は、一つも答えがなく終わった。




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