文字数:約625文字
最初の職場では、失敗をするとすぐに謝っていた。
「すみません」
謝る事しか出来なかったし、怒られる事が怖かった。
「何で、出来ないの?」
出来る事が前提で話が進み、出来ない私はポンコツだった。そのうち「すみませんはもう、いいから」と言われてしまった。
次の職場では、失敗をする事が減った。慣れと、謝る事の無意味さを知ったせいもある。それでも、時には失敗をする。
「すみません」
「いいよ。大丈夫だから」
その言葉にホッとする。
大したミスではなかった事もあるが、『大丈夫』と言われるだけマシだと思った。
さらに次の職場では、失敗をしない事を目指した。
そして実際に、『ほぼノーミス』で仕事をこなした。
「すごいね。エラーが出ないなんてすごい」と言われて、天狗 になりかけた。
そして、ミスは起こる。
「すみません」
「すごいね。よく気がついたじゃん」
目から鱗 だった。
失敗をしたのに、失敗に気がついた事を褒められた。
「え?」
「いや。気がつかずに、そのまま仕事が進む方が大変な事になるから」
ポカンとした私に、ちゃんと説明をしてくれる。
失敗に気がついてちゃんと伝えていいんだと思えた。
職場によって、こんなにも失敗した人間に対する対応が違うのかと思った。
最初の職場で責められていた私は、ミスを伝えなくなっていた。自分でリカバーしようとしていた。
最後の職場ではちゃんと伝えられるどころか、『伝えていいんだ』と思えた。そんな職場がある事に気がつけた事に感謝した。
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