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✞ ☆番外☆ 失敗と失敗 ✞

2023/07/24
文字数:約625文字
 最初の職場では、失敗をするとすぐに謝っていた。

「すみません」

 謝る事しか出来なかったし、怒られる事が怖かった。

「何で、出来ないの?」
 出来る事が前提で話が進み、出来ない私はポンコツだった。そのうち「すみませんはもう、いいから」と言われてしまった。


 次の職場では、失敗をする事が減った。慣れと、謝る事の無意味さを知ったせいもある。それでも、時には失敗をする。

「すみません」
「いいよ。大丈夫だから」

 その言葉にホッとする。
 大したミスではなかった事もあるが、『大丈夫』と言われるだけマシだと思った。


 さらに次の職場では、失敗をしない事を目指した。
 そして実際に、『ほぼノーミス』で仕事をこなした。

「すごいね。エラーが出ないなんてすごい」と言われて、天狗てんぐになりかけた。

 そして、ミスは起こる。

「すみません」
「すごいね。よく気がついたじゃん」

 目からうろこだった。
 失敗をしたのに、失敗に気がついた事を褒められた。

「え?」
「いや。気がつかずに、そのまま仕事が進む方が大変な事になるから」

 ポカンとした私に、ちゃんと説明をしてくれる。
 失敗に気がついてちゃんと伝えていいんだと思えた。


 職場によって、こんなにも失敗した人間に対する対応が違うのかと思った。
 最初の職場で責められていた私は、ミスを伝えなくなっていた。自分でリカバーしようとしていた。
 最後の職場ではちゃんと伝えられるどころか、『伝えていいんだ』と思えた。そんな職場がある事に気がつけた事に感謝した。




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