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その日は休日で、私はアパートの部屋に戻ってゆっくりと米のより分けをしていた。
私が食べている米は、実家で作ったもの。
しかし、売り物にならない部分を食べているので石が混ざっている事がある。それを取り除いていたのだ。
クッションに座って、テレビを見ながら作業をしていると視界の端で何かが動いた気がした。
米から視線を外して、部屋のドアを見ると知らない男性が立っていた。
ゆ・う・れ・い?
と思った思考は次には、実体だと判断した。
とすると、私が部屋を間違えたのだろうか?と、ありもしない事が頭を巡る。
部屋にあるものはすべて私のものなのだから、部屋を間違えているのは相手の方だ。
という事は、相手はすぐに部屋を出ていくだろう。相手も焦っているだろう。
が、そうはならなかった。
開け放したままの扉の前に突っ立っていた男は、おもむろに屈みこんだ。
何をしているのかと思っていると、ズボンを脱いでパンツ一枚になっていた。
上は着たままで、下はパンツ一枚の男が目の前にいる。
叫びそうになったが、声は出なかった。声は喉に張り付いて出てこない。
男の顔は無邪気に笑っているように見えた。悪意は感じないが、行動からは悪意しか感じない。
男がさらに一歩部屋に入り込んで来たところで、私は立ち上がった。
携帯をひっつかんで、男の脇をすり抜けて玄関のドアへと飛びつく。
さらなる恐怖が、そこに張り付いていた。
チェーンが、かけられていたのだ。チェーンがかけてあったなら、男は入って来ているはずがない。
このチェーンは男がかけたのだ。そう思うとぞっとした。
私はそのチェーンを外して、外に出る。男の行動は見た限り、緩慢だった。
ズボンも脱いでいたし、あの動きならば追って来るまでに時間はかかるはずだと思ったが、怖くて後ろは見る事が出来ない。
エレベーター前まで辿 り着いて、立ち止まる。エレベーターに乗ろうと思ってやめた。個室は怖くては入れなかった。
階段で下へと降りるが、これも男が追いついて来るかもしれないと思うと恐怖しかない。
アパートの外へ出て、どこへ行こうか迷う。
季節は冬。足元には雪だというのに、私の足は靴下だけだった。
コンビニエンスストアへ行けばいいのだろうか?でも、こんな姿では私が不審者になってしまう。警察に連絡?いや。それもなんだか怖い。
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