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ビアンイベントに参加した。きっかけは、一緒に行ってくれる人を募集しているというのを見たからだった。
その子は一度行った事があり、大体の事が分かっていると言うので、ついて行こうと思った。
成人女性のみのイベントだったので、出入り口で身分確認をされて中に入る。思ったより狭いと感じたのは、人が多かったせいだと思う。
一緒に行った子が、ロッカーに荷物を入れて、飲み物を注文するんだよと教えてくれた。
よく分からずに人ごみに流されていると、「ここに居ると、邪魔になるから端っこに行こう」と私を引っ張る。
意味が分からないままに、端に行くとショーが始まって先ほどまでいた場所では邪魔になる事が分かった。
会場内でのショーが終わると、ステージでのイベントが始まった。
その子とは、しばらく時間が経つと友人が来たと言うので、別行動になった。
ステージでは相変わらず、何かをやっている。それをぼうっと見ていると、「一人で来たの?」と声をかけられた。
見ると、知らない人……だったが、記憶力に自信がない私は一瞬『知り合い?』と考えてしまった。
「ここに来るのは、初めて?」
私はジロジロと相手の顔を眺めてしまう。
「……はい」
「そっか、連れはいないの?」
「いないです」
これは何なのだろうか?ナンパ?これもルールが何かあるのだろうか?
答えながら、私はどうするべきなのか考えた。しかし、全く分からなかった。
「一人なら、こっちに来て、一緒に話そうよ」
そう言って、ソファーのある一角に引っ張られて行く。
ソファーに座ると、質問攻めにあって一つ一つ答える。にぎやかな人だなと思った。
それが一通り終わると、「ちょっと、行ってくる」と、彼女は立ち上がった。
傍にいた彼女の友達が、「彼女、積極的でしょ。いつもあんな風なんだよ」と言ってきた。
いろんな人に話しかけて、お友達を作るというタイプなのか。
私は残念ながら、お友達とは程遠いなと思った。周囲には馴 染めないし、浮いている。
彼女が再び戻ってきて「じゃぁね」と言ったので、私は手を振った。
いろんな人の様子を眺めながら、私はどこまでも私なのだと思った。
朝になって、私は始発で帰った。
それから、一週間もしないうちに会社で言われた。
「カタチさんも、二丁目に行けば人生観が変わるよ」
「……そうですか?」
行ってみたけど、全く何も変わらない私はなんなのだろうか。
ビアンはビアンで、私は私だった。まじわるものは何もない。
会社ではきっと、私は堅物真面目で異性愛者だと思われていたのだろう。
けれど、私が好きになったのは同性だった。
ただ、同性愛者かと言われたら、首を傾 げてしまう。
私は私が分からない。
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