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✞ ☆14☆ 再会1 ✞

2023/07/27
文字数:約1176文字
 仕事がなかったころ。
 ハローワークに行く途中で、同級生に会った。

「久しぶり」

 相手から声をかけられて、振り返ると懐かしい顔だった。
 彼は高校の相談室仲間の一人で、中学では生徒会長をしていた事もある。

「何しているの?仕事に行く途中?」

 私は素直に、ハローワークで求職中だと答えた。
 彼は休職中で、仕事で鬱病うつびょうになって今はカウンセリングを受けているのだと言った。
 簡単に近況を話して、別れ際に「時間があったら、お茶をしない?」と誘われた。

 求職中でハローワークの用事が終われば、時間は有り余っていた。彼はカウンセリングが終われば、時間があると言っていた。お互いに用事が終わったら、連絡をするためにメルアド交換をした。

 ハローワークでの用事が終わって、携帯を見るとメールが来ていた。


『駅前の喫茶店にいるから、来て』

 同級生君からだった。私は、慣れない駅前でメールに書かれていた喫茶店を探してお店に入った。
 きょろきょろと店内を見渡すと、小さく手を振る同級生君を見つけた。私は同級生君に向かい合うように座る。

「待った?」

 私は何気なく同級生君にそう聞いた。同級生君は少し驚いた顔をして、「別にそんなに待っていない」と言った。
 コーヒーを注文して、私は同級生君と詳しい近況を話し合った。

「ところでさ、他の人たちと連絡取っている?」

 そう聞かれて、答えに困る。高校卒業時に携帯電話を持っていた事は、誰にも言わなかった。
 ほとんどが県外へ出ているという話しか知らないので、連絡は取っていない。

「ううん。連絡先は誰にも教えていないから」
「そうか。俺も似たようなものかな。唯一、Nとは連絡を取っていたけど……」

 こたみちゃんの元カレの名前が出てきて、少しドキリとする。
「そういえば、こたみとは仲が良かったんじゃなかった?」
「うん。そうだけど、番号は教えていないから」

 私はうそをついた。こたみちゃんとは、険悪になって連絡を絶ってしまっていた。

「そっか」

 同級生君はそれ以上、こたみちゃんの事は聞いて来なかった。

 帰りの電車は同じなので、電車の中でも話が続く。
 電車では4人掛けのボックス席に向かい合うように、座った。
 話も尽きて、しばらく無言の時間が出来た。

「ねぇ。俺と付き合わない?」

 唐突の告白に、私は言葉が出なかった。
 何がどうしてどうなったら、『付き合おう』になるのだろうか。
 私はただ、久しぶりに会った同級生とお茶をしただけである。

「え?何で?」

 かなりテンポが遅れて、私は疑問を投げつけた。

「いや。俺たち、気が合うでしょ?こんなにたくさん話もしたし」

 確かに私は、学生時代は人と話さなかった。同級生君の私のイメージは『しゃべらない私』なのだろうと思う。
 これだけ私がしゃべるという事は、俺に気があるのか……と、誤解したのだろうか。
 妄想力のたくましさに、眩暈めまいがする。




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