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✞ ☆25☆ クリスマス3 ✞

2023/07/28
文字数:約1458文字
 悪夢はここからさらに加速する。

「ね。キスしよ」

「無理です」

「恥ずかしがらなくていいよ。恋人なんだしさ」

 無理と続けると、「じゃぁ。映画のチケットを買ってこよう」と契約社員さんは諦めた。
 私も外に出る。このまま、どこかに行こうかなと思ったが、契約社員さんは手を握ってきた。

「恋人なんだから、これくらいは良いでしょ」

 私はもう、何かを言う気もなくなった。
 チケットを買うと、近くのプリクラに行った。

「まだ、時間があるから、プリクラでも撮ろうか」

 時間が遅いせいか、人は思ったよりもまばらだった。
 プリクラのスペースに入ると、契約社員さんは私を抱きしめて来た。

「ここなら、誰も見ていないよ」

 そう言って、不意にキスをして来た。プリクラで男性の入場制限がある理由を理解した。
 身体を後ろに引こうとするが、契約社員さんの手は私の肩をがっつりとつかんでいる。

 今までの男たちの【総まとめ】のような人間だなと思った。
『クリスマスに恋人を作って、デートして、あわよくば……』というストーリー以外が見えていない。私と付き合いたいわけではなく、『女ならば誰でもいい』という今までの男たちと同じ。

 黙ってされたままにしていると、舌をねじ込ませてきた。
 いろいろなものが面倒だ。もう、この男と話す事さえ嫌だ。

 されるがまま放っておく事にした。
 しばらくすると、男は満足したのか唇を離した。

「気持ちよかった?」

 私は黙っていた。それを相手は勝手に『気持ちが良かった』と解釈する。
 私が何を言ったところで『恥ずかしいからそう言うだけで、気持ちがいいと思ったのだ』となるのだから、私の言葉は要らない。

 結局、プリクラは撮らなかった。

「まだ、時間があるから、車に戻ろう」

 車に戻ると再び、キスをする。せめて、うがいをしてからした方がいいのにと思った。
 先ほど食べたポテトの臭いと味がする。
 先ほどよりも長くじっくりと口内を味わって、男は私から身体を離した。

 映画の時間になり、映画館に入った。
 スクリーンには、アニメが映し出される。私が、このアニメキャラのストラップを付けていたので、男が『カタチさんはこのアニメが好き』と勘違いした結果だった。
 ストラップを付けていたのは携帯を取り出しやすいからで、アニメ自体はファンというほどではない。

 隣を見ると男は熟睡していた。無理に映画に付き合ってあげた感がすごいなと思った。
 私はと言えば、物語が好きなのでしっかりと見ていた。見ている最中に邪魔をされないのは助かったとすら思った。


 映画が終わって、映画館を出る。


「僕、寝ちゃってた。全く見ていなかった。映画は面白かった?」


 悪びれるでもなく、男はそう言った。私は黙ってうなづいた。一言も発したくはない。早く帰りたい。
 車に乗って、帰るものだと思ったが、男は別の事を言った。

「僕の家に来ない?ムラムラしちゃって、続きがしたい」

 映画中にぐっすり寝ていた男は夢の中で、何を見たのだろうか。
 私は今すぐにも帰りたいのだが、男と言い合う気力もない。

 黙っていると、勝手に話が進む。

「君もムラムラしない? 飲み物がないから、コンビニで飲み物を買おう」

 そう言って、車はコンビニエンスストアへと向かった。
 コンビニエンスストアにつくと、適当に飲み物を選ぶ。

「あ。コンドームも買っておくね」

 なぜ、私にコンドームを買う報告をしてくるのか理解できなかった。
 それは、私が『同意』をしていると確認したいのか、単に準備不足を私に伝えたいのか。

 私は何も言わずに、それを見ていた。




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