✞ 物語の前に ✞
文字数:約290字 トウツキは私の過去物語。 物語の中で私は『 マル ( マルちゃん ) 』や『かいぬし』と呼ばれます。 私が生まれる前の話は土地に伝わる話や、両親の話をもとに書きます。 私が生まれた後の話は、私の記憶をもとに書いています。 どちらも事実の検証はし...
文字数:約290字 トウツキは私の過去物語。 物語の中で私は『 マル ( マルちゃん ) 』や『かいぬし』と呼ばれます。 私が生まれる前の話は土地に伝わる話や、両親の話をもとに書きます。 私が生まれた後の話は、私の記憶をもとに書いています。 どちらも事実の検証はし...
現実と空想の物語。 ― 私の生い立ち ― 私の物語。 トオツキ の続き。 大人のお話。 偽りの恋の相手、守り人さん お互いに内緒事を続けた会長様 不思議な雰囲気だった魔女さん 一度きりの出会い 告白男性たちと性的少数者 一部、性的な表現があるので、苦手な方は...
現実と空想の物語。 ― 私の生い立ち ― お喋り苦手な私の話。 子供時代。 学級崩壊した小学校生活。 校舎引っ越しの中学生活。 担任が逮捕された高校卒業直前。 集団赤痢が起きた専門学校。 自傷行為をした営業時代。 一部、いじめと自傷の表現があるので、苦手な方は注...
30. And that's all ...? (それでおしまい) おしまい。 物語の終わりは「幸せに暮らしましたとさ」だと思った。 小さい頃読んだ絵本、紙芝居は大体そんな終わり。 「で、おしまいはどうなるの?ハッピーエンド?」 自分で物語を書くよ...
29. おかえり 「お帰り」 「うん」 家に帰ると聞こえる声に私は返事をしない。 小さな頃は何も聞こえなかった気がする。 いつから「お帰り」が聞こえるようになったんだろう? 違和感じゃないけど、なんだろう?しっくりこない。 「お帰りっていったでしょ」 繰...
28. 記憶 記憶。たくさんの記憶。 思い出とは違う…… 記憶の中で強い感情を伴う記憶が思い出。 中学の思い出、高校の思い出が少ない。 覚えていないのでなく覚えていたくないから。 記憶だけでいいんじゃないかと思っていたから。 記憶。消えゆく記憶。方...
27. 迷い子 迷い子の様に不安な目をしていた。 いつだって、自分の居場所はここじゃない。 そんな目をして泣くのを耐えていた。 でも、逃げ出せない場所。 逃げ出す事が恥となる場所で、 必死に耐えて時間が過ぎるのを待っていた。 泣けない理由を知っている。 ...
26. パンドラ パンドラは開けてはいけない箱を開く。 私が開けた箱もパンドラの箱。 押さえつけた感情。 代わりの箱を開けては閉じて、閉じては開けて…… 代わりでは耐えられなくなる。 絶望と恐怖と混乱が解き放たれる。 赤い雫と共に…… 箱の底に希望は...
25. 棘(とげ) 「いたっ」 薔薇の花に棘があるのは知っている。 私が触ったのはおじぎ草。 花はほわほわで綺麗じゃないけど、可愛い綿毛みたい。 触れると頭を垂れるように葉が下を向く。 それが楽しかった。 触れると動くと、触れてるうちに棘が刺さった。 棘...
24. 3K 3K。感情。気分。気持ち。 ころころ変わる変化形。 何一つ、確かでなく不確か。 つかみ所がないもの。 不安定に安定して安堵する。 自分でさえ掴めないもの。 何が私の心を変えるのだろう。 きっとそれは、些細な事。 <<前 目次 ...
23. 永遠 「永遠ってどんな意味で使ったのですか?」 電話の向こう側の声。そう言われて、首をかしげる。 『永遠なんてない』 そんな風に私は使った。 ずっと続くものなんてありえない。 いつだって、どんなものも変わってゆく。 留まれば濁り、腐敗していくしか...
22. ふたり ふたり、だけの時間。 メッセンジャーでする秘密の会話。 別に秘密にしたいわけじゃない。 他愛もないおしゃべりと、何気ない安心感。 特別な空間。 貴方だから、言える事。 貴方だから言えない事。 そーいう風に人によって使い分ける。 それ...
21. Cry for the moon. 不可能なことを求めてください。 不可能だと諦める。 「ねぇ。諦めるって『我を極める』のが元らしいよ。 つまり、それ以上伸びないからやめるんだよね」 何気ない言葉が心に留まる。 私はどうだろう? 諦めるのは、伸びない...
20. モノクロ(モノクローム:1色だけでかかれたもの) 白と黒の世界。 点 、点 、で描いた絵。 「疲れた。やめよ」 そう思ってもまだ描けると描いてみる。 黒に染まる事の無いその絵。 点が増えて、潰れて、白が減る。 それが楽しかったりする。 「細か...
19. 予定外の出来事 ……。 「今日中には、帰れないな」 ああ、まただ。 いつもいつも私の家のドライブは無計画。 適当に近隣の県に行って、日帰りドライブ。 の予定…… 「泊まれるか。聞いて来い」 ってお父さんは言う。 お母さんはしぶしぶ車を出る。 ...
18. 砂糖菓子 お葬式で貰った、花の形の砂糖菓子。 テーブルに一つ。 「食べていい?」 私はそれに手を伸ばす。 「いいよ。誰も食べないし」 砂糖の粉がぼろぼろこぼれた。 紙を敷いた。 テーブルに砂糖菓子一つ。 「食べていい?」 「あんたしか食べな...
17. 君は誰 「君は誰」 問う声に私が答える。 「私は私」 その他にはなれず、その他には見えない。 どんな道を行こうとも、誰と付き合おうとも 変えようの無い事実。 でも、迷う事がある。 誰も私の名前を呼ばない時。 でも、惑う時がある。 誰の名前も呼べない...
16. 涙 泣いた日を覚えてる? 声を出してその痛みを感じた日。 幼い頃は小さな石一つで転んだ。 犬に追いかけられて転んだ。 そうして、擦りむいた膝が痛くて泣いた。 やがて、大きくなって転ぶ痛みさえ忘れた。 でもふっと思い出す時がある。 紙で切った指先と...
15. シンドローム 朝になる。目が醒める。 いつもの通り学校へ。 いつもの通り無表情へ。 いつもの通り無関心へ。 変わってゆく。 いつもの通り授業へ。 いつもの通り無感情へ。 いつもの通り無感覚へ。 カワッテユク。 「先生がまっすぐ前見て歩いてた...
14. きせき キセキ:軌跡 1.車のわだちのあと。 2.幾何学である条件に適合する点が描く図形。 わだち:車輪が通った後のくぼみ。 新選国語辞典(小学館)より 白い白い雪の中。 残っているのは幾つかの車輪の跡。 ますっぐに延びる線 ゆがんで他の線と...
13. 螺旋 螺旋階段、必死に上る。 何処までも続くと思えた。 必死にお父さんの手を追いかけて 置いていかれないように やがて振り返って手を握ってくれる。 「ほら、一段ずつ一歩づつ登れば早い」 そうは言っても、私の小さな足では、一段に二歩づつでやっと 必死に登...
12. 罪 「生きる事は罪」 そう言ったのは誰だったか。 「なぜ」 と母に聞いた気がする。 母の答えは覚えていない。 今なら微かに分かる気がする。 他を喰らわねば生きられぬ。 他を犠牲にせねば今はない。 他がいなければ我がいない。 犠牲の上の私。...
11. 37.5 小さな頃は自分の体温が分からなかった。 自分の体温を知ったのは何時だったろう? 「風邪ね」 体温計は37.5を指している。 それでも平気で飛び跳ねて、風邪だといわれてもピンと来なかった。 「大人しく寝てなさい」 そう言われるたび、なぜ...
10. ドクター どんな薬もいらない。 癒しの手も必要ない。 傷がある事なんて認めない。 強がって、強がって― そうしなければ生きていけない。 人に頼れば全てを委ねてしまいそうで 自分で歩く事さえ出来なくなりそうで 怖かった…… 「おいでよ」 ...
09. 冷たい手 どんなに擦っても冷たいまま。 どんなに呼んでも振り向かないまま。 どんなに望んでも還らないまま。 人の死を3つ知ってる。 一つは小学低学年の時。 クラスメートがある日来なくなった。 先生が暗い顔で告げる。 貰ったハンカチーフが嬉しかっ...
08. 境界 行ってはいけない場所。 見てはいけないモノ。 聞いてはいけない事。 窓の外はいつもと変わらない光景。 変わったものなど何一つ無い。 この膨れ上がる苛立ち以外は。 握り締めた教科書には書いてない。 この感情が何なのか。 廊下で行き交う人...
07. 携帯電話 利便性を追い求めて 見失ってしまうもの。 母は携帯電話が嫌いだった。 「かけたのに繋がらない。いつも電源切って」 携帯電話を持った父に嫌味そうにそう言っていた。 いつでも何処でも繋がるわけじゃない。 電波が悪ければ、電池が切れればただのガラク...
06. レトロ 教室の中。雑踏の中。 息をする事さえ出来ないでいた― 変わりたくて変われなくて。 ルーズソックスに短いスカート、茶髪。 高校の時の流行の格好。 もちろん、学校ではそれは禁止されている。 校則違反になるのだ。 でも、人は流行を好む。 特に高校...
05. 雨 雨の音は嫌いじゃない。 滴る雫の音。 跳ねる水の音。 ヒタヒタとパシャパシャと 何処か物寂しげな音に耳をかしげる。 一人っきりの部屋で 真っ暗な空間で いつも泣きたい私がいる。 いつも泣けない私がいる。 下からはまた、お母さんの怒鳴り声。 ...
04. 遊園地 閉じてしまった門の外。 いつも眺めては、ため息ついた。 観覧車が遠く微かに見える。 楽園のような憧れがそこにある。 学校の遠足で行った遊園地。 息苦しくて歩きたくなくなった。 人に合わせて楽しむ事が苦痛だった。 ジェットコースターの上で黄色い...
03. 鬼 小さな時の記憶は不確かで その感覚は今でも忘れられないほど正確。 いつものドライブ。 行くのは大抵、山だった。 山菜取りにどんぐり拾いに様々な目的で。 お正月の初詣も山の中の神社へ行く。 そこで私はいつも鬼を見る。 木々の間に間に 風の間に ...