✞ 9話 依存 ✞
文字数:約1373文字 ゴールデンウィークになると、私は守り人さんを避けるようになった。 アプリに『ログイン非表示』の機能が搭載されたからだ。 こちらからは、守り人さんがログインをしていることが確認できたが、向こうからは見えない。 タナトス:謝るべき?ログインしてたけ...
文字数:約1373文字 ゴールデンウィークになると、私は守り人さんを避けるようになった。 アプリに『ログイン非表示』の機能が搭載されたからだ。 こちらからは、守り人さんがログインをしていることが確認できたが、向こうからは見えない。 タナトス:謝るべき?ログインしてたけ...
文字数:約964文字 オフ会が終わって、最初のチャットで私は聞いた。 タナトス:……質問。 守り人さんの私への評価は? 守り人:…難しいね。言葉を 碌 ( ろく ) に交わせてないから。悪い意味じゃ無くてね。 ただ、タナさへの評価は割と高い場所に在ると思って。...
文字数:約1400文字 さて、会う日にちが決まって時間も場所も決まった。 守り人さんには、伝えて後は『目印は何にするか』を伝える。 私は、『 梟 ( ふくろう ) のリュック』に『 蛙 ( かえる ) のマスコット』を付けている。服はチェックのワンピースと伝えた。 しか...
文字数:約862文字 全ての不満が、『月のモノ』のせいにされてしまう。 守り人さんにとって、私が不機嫌で要望を伝える日は『ツキの日』だからで片づけられた。 不機嫌な言葉が、『本音』であることは脇へ押しやられ、『可愛いタナさ』の言葉だけが守り人さんの耳に残る。 守り人さ...
文字数:約722文字 再び、えすえむ話が続いて、私はとうとう「見捨てて」と伝えた。 それはとても明るい感じで、怒りも悲壮感もない話から始まった。 守り人:タナさが「して欲しい」と思う事を云えば良い。 タナトス:見捨てて♪ 守り人:そうされて、耐えられる? タナト...
文字数:約1128文字 毎日、毎日、非日常話が続くと、私の不安定な心が、益々不安定になった。 えすえむ話の終わり方を考えるが、どこをどうしてもそこに戻されてしまう。 私の中で、えすえむ話に切り上げたい気分半分、乗りたい気分半分というのも問題だった。 えすえむ話に乗りたい...
文字数:約889文字 会長様とはその後、チャットやメールをしなくなった。 その分、守り人さんへの依存が高まった。 ある日、うちの弟は虐めたくなるほど可愛い子という話になった。 守り人:タナさも、Sッ気が強い方? タナトス:ん~?どっちが、どっちだっけ。 なんか、未だ...
文字数:約571文字 仕事をやめると、ほぼ毎日チャットをするようになった。 1・2時間ほどがあっという間に過ぎて、寝る時間になる。 そんな日が続いた。 守り人さんとの会話は、ちょっとした日常の事や、ビジネスマナーや、最近の若者は……みたいな話だった。 守り人さんの年齢...
文字数:約666 文字 学生の頃、「声遊び」にはまっていた。 他の人のネットラジオを聞いたり、声のホームページを巡ったりもしていた。 そのうち、とある声のページを見つけて、気に入った。 そのホームページは、初心者さんへといったコラムもあって、読み応えがあった。 声も毎...
文字数:約270文字 後悔はしない。 人を好きになった事を、人を 弄 ( もてあそ ) んだ事を、人を傷つけた事を。 私は私が思うほど、『いい人』にはなれなかった。 最初から私は、守り人さんが好きなふりをした。 好きになった人には、永遠に思いを打ち明けることはない。...
文字数:約302文字 トウツキは私の過去物語。 トオツキの続きですが、 呼び名 ( ハンドルネーム ) は「ノア」に変わります。 インターネットでつながった人が中心のお話しになるので、 「カタチ マル」も「カイヌシ」も、あまり出てきません。 トオツキに続いてこちらも基...
文字数:約360文字 学校があったので、地元にいなかったので、成人式には出席しなかった。 後になって、母から 「何か届いていたよ」 と渡されたのは、成人式に欠席した人に届く記念品だった。 開けると「金魚草の種」と「コンドーム」が入っていた。 種は、 撒 ( ま ) ...
文字数:約426文字 専門学校に通っていたころ、小学校からの文通相手に実際に会った。 会ったのはこの時、一度きりだった。 彼女の大学に潜り込んで、講義を受けさせてもらった。 大学ってこんな場所なんだとわくわくした。 その後、彼女がやるキリストの劇を見て、帰った。 「...
文字数:約440文字 専門学校時代、クラスメイトに中国の人がいた。 4人兄弟と聞いて驚いたが、日本で勉強をするくらいなのだから、お金のある家と言う事だった。 お金があれば、子供をいくら作っても大丈夫というからくりを聞いて、ますます、驚いた。 「どうして、みんな一緒に、食事...
文字数:約549 文字 私は仕事をやめた。 辞職理由は『病気』だった。 病院には一切行っていない。書類上の理由が『病気』なことに笑った。 会社に行っていた頃、たくさん折った紙飛行機は部屋を埋め尽くした。 紙飛行機を集めた。 会社から持って来た個人情報満載の書類も集め...
文字数:約1047文字 昼間に会えなかったので、こたみちゃんは、「ちょっと遅くなってもいいなら家に行くけど?」と言ってきた。 それで良いよと返した。 こたみちゃんが私の家に来たのは、小学生の時に一度きりだった。その一度の記憶を元に、真っ暗な中やってきた。 ……いいよと言...
文字数:約855文字 家族にもバレた。 母は「死にたかったんでしょ!!一緒に死んでやる」と、私に向かって叫んだ。 自傷を知った親が、どんな対応をするものなのかは知らない。 「私なんかいらない」という母を、私は子供の頃から慰めてきた。 「あなたが死にそうになっても助けない。...
文字数:約907文字 会社へは電車で行く事もある。 その日は電車に乗っていた。 「あれ?カイヌシ??」 見ると、こたみちゃんだった。 高校卒業以降は連絡を一切取っていない。 久しぶりなこたみちゃんが、そこにいた。 「今、何しているの?私はね」 と近況の交換をして、...
文字数:約807文字 あげはちゃん ( 父方従姉妹 ) が、私と同じように試験を受けて合格をした。 あげはちゃんに最後に会ったのは、高校生の頃だった。数年ぶりに会ったあげはちゃんは、少しだけ落ち着いていた。 夜遊びをして、金髪ピアスだったあげはちゃんは、夜遊びをしない金...
文字数:約925文字 ある日の会社帰り。電車で帰るために駅に向かって歩いていた。 突然、後ろから「すみません」と声をかけられた。 振り返るとリュックを背負った男性が、いた。 「駅はどこですか?」 「向こうですけど……。私も今から行くので一緒に行きましょうか?」 私は自分...
文字数:約1123文字 年が変わる頃、父が言った。 「保険の仕事をしないか?」 何度も書いてきたように、私はお 喋 ( しゃべ ) りが苦手。 母は保険の仕事を即座に反対した。 母の反対は正しいが、恐らくそれは父から見たら過保護に見えたのだろうと思う。 「大丈夫だから...
文字数:約743文字 卒業した私は実家に戻った。 2年間遊んだ私は、そこで「生きていけない自分」を自覚した。 就職した方が良いんだろうなと言う漠然とした感覚と、 車がないのに就職が出来るのか?という不安の間で、私は無職の日々を送った。 免許だけは学生時代に取った。 ...
文字数:約1419文字 全てが 億劫 ( おっくう ) になりながらも、課題は辛うじてこなした。 評価は最低、とりあえず提出したという程度の物しか出せなかった。 研修旅行もあったが、これもまた一人で行動しようと思った。 ……が、海外でずっと女一人行動はヤバいと思い直し、...
文字数:約817文字 寮生活も半年以上 経 ( た ) ったころ。いろんなものが限界に達してきた。 まず大きいのは、ずっと集団生活で気が休まる場所が、ないということだった。 部屋は一人部屋なので、安心できる……わけではない。 壁は薄いので、廊下の音も隣の音も筒抜け。隣は...
文字数:約823文字 赤痢の騒ぎも忘れた頃に、アルバイトをすることを考えた。 働いた事がないという事が、いけない事のように思えたからだ。 私は求人情報で見つけた飲食店へ応募して、受かった。 が、一日で自分には合わない事を悟った。 失敗が多すぎて、迷惑もかけたので、使...
文字数:約884文字 次の日、普通に学校に行った。先生は何も言わなかった。 ただ、検便が全く出せなかった。 緊張とストレスと、食べる量が極端に減ってしまったせいで、出てこなかったのだ。 さらに次の日には、寮母さんから便秘に効くという漢方を 貰 ( もら ) って飲んだ。...
文字数:約1012文字 当時の私には、どう判断したらいいのか分からず、先生たちの話はただの差別にしか聞こえなかった。 欝々 ( うつうつ ) とした気分で寮に帰る気分にもならず、日が落ちるまで、近所の神社で座って過ごした。 ただでさえ、寮の中は赤痢の話題しかなくて落ち...
文字数:約1246文字 寮での生活もそれなりに落ち着いてきたころ、赤痢が寮で出たという知らせが張り出された。 赤痢とは主に下痢・発熱などの症状が出る感染症。寮生の数人が発病し、隔離された。 即座に、食事がお弁当へと切り替えられて、消毒液がトイレや洗面台・食堂や玄関に置かれ...
文字数:約600文字 寮とはいえ、初めての一人暮らし。家族が恋しくなって……ない。 最初は不安に思えたことも、パソコンとインターネットがあれば寂しさも不安も消え去った。 ただ一つだけ、ほっちゃんが後ろに居ない事が、不思議な感じだった。 ほっちゃんは私の一つ下なので、振...
文字数:約939 文字 県外の専門学校に入学した。 専門学校では寮に入った。 複数の学校の子が出入りする女子寮。男女混合の寮もあったけど、気分的に男がいるのは落ち着かないと思ったので、女子寮にした。 新しい土地、新しい人たちに囲まれて、新しい生活がスタートした。 ま...
文字数:約764文字 相談室に通うようになって、私は心地いい時間ができるようになった。 雑談をして、絵を描いて、言葉を書く。 落書きの為の小さなノートは常にポケットにあった。 そうしているうちに、受験の時期になり、「どこに行くの?」という話も出てくる。 進学情報誌も...