✞ ☆3☆ 部屋に入って来た男2 ✞
文字数:約1330文字 迷った揚げ句、私は近くの工場前へと行った。外を歩く人は少ないが、工場内には人がいるので、何かあれば守衛さんに訴えればどうにかなりそうと思えたのだ。道を挟んだ向こう側にいれば、私が靴下でも見えないというのも良かった。 そこで家族に電話をして、来てもら...
文字数:約1330文字 迷った揚げ句、私は近くの工場前へと行った。外を歩く人は少ないが、工場内には人がいるので、何かあれば守衛さんに訴えればどうにかなりそうと思えたのだ。道を挟んだ向こう側にいれば、私が靴下でも見えないというのも良かった。 そこで家族に電話をして、来てもら...
文字数:約971文字 その日は休日で、私はアパートの部屋に戻ってゆっくりと米のより分けをしていた。 私が食べている米は、実家で作ったもの。 しかし、売り物にならない部分を食べているので石が混ざっている事がある。それを取り除いていたのだ。 クッションに座って、テレビを見...
文字数:約1215文字 ※この話は小学生の時なので、『まる』が呼び名です。 低学年の頃に歳上の従姉妹と遊んだ。 その日は、妹たちもいなかった。 「お母さんたちは用事があるから、しばらく二人で遊んでいてね」 伯母 ( おば ) さんはそう言うと、母と一緒に奥へと...
文字数:約625文字 最初の職場では、失敗をするとすぐに謝っていた。 「すみません」 謝る事しか出来なかったし、怒られる事が怖かった。 「何で、出来ないの?」 出来る事が前提で話が進み、出来ない私はポンコツだった。そのうち「すみませんはもう、いいから」と言われてしまっ...
文字数:約1198文字 派遣の仕事は、担当と呼ばれる人が窓口になってくれる。 ある派遣の仕事の担当さんと前職の仕事の話になった。 「前は保険の営業をやっていたんです」 良い思い出はないが、他に言いようがなかったのでそう答えた。 「へぇ。身体で稼いだんでしょ?」 私は...
文字数:約807文字 ある日、職場に行くと中国の人がいた。前日まで見かけたことのない人だった。 「時々、彼女にやってもらうから。少しだけ日本語が分かるらしいから、大丈夫」 そんな説明だったが、その『少しだけ日本語が分かる』というのが、よく分からなかった。その人は急きょ休みに...
文字数:約1147文字 日本ではタバコとお酒は二十歳からとなっている。それが変わる事はないと思う。 現実はそうではないとしても。 親が良しとしているのならば、親族間で未成年がお酒を飲むという事はあると思う。そうではなくても、仲間内だけでこっそりというのもあるのだろう。 ...
文字数:約746文字 地元にいた頃に、地震が起きた。私が住む県は、めったに揺れる事がない。その地震も県内はほとんど揺れず、隣の県で大きな被害が出た地震だった。 翌日は『仕事中に地震にあったら、どうするのだろうか』と同僚たちと話し合っていた。 それを耳にしたのかどうかわか...
文字数:約766文字 最初の魔女は、保育園の先生だった。 彼女は私を人形にした。 「そんなんじゃ、おひな様になってしまうよ」 私は呪いを信じた。 自分は 喋 ( しゃべ ) らず、動かない人形なのだと思っていた。 次の魔法使いは、小学校の先生だった。 先生は私を花...
文字数:約1350文字 魔女さんは、自分は解離性同一性障害だと説明してくれた。分かりやすくいえば『多重人格』で、私に話しかけていたのは、人格の一人で元の人格ではないのだと魔女さんは言った。 面白いなと思うと同時に、チャイルドの『 嘘 ( うそ ) つき』の理由はこれだなと思...
文字数:約1573文字 ずっと黙っていたので、目立ってしまった。 でも、大抵の講座はテキストに沿って進むので、自己紹介後に何かを 喋 ( しゃべ ) るという事はない。しかし、この講座は違った。テキストは一応ある。けど、それに沿っては進めない。場の空気と感覚で進むよ――とい...
文字数:約1325文字 予約した講座を忘れるという危うい状況で、もう一つ予約した講座がある。 『 宇宙講座 ( 仮の講座名 ) 』というもので……説明は難しい。自分でも何でその講座に行こうと思ったのか、謎でしかない。宇宙講座となっているが、『宇宙の話をする講座』ではない。 ...
文字数:約923文字 いろんな講座に行ったけれど、次第に『予約自体を忘れる事』が増えた。 予約をネット上でして、講座当日にすっかり忘れ去っている。後から『当日キャンセルは困ります』というメールを見て、今日が講座の日だったと思い出す。 そんな感じになってしまった。 そして...
文字数:約885文字 オラクルカードを買う事にした。オラクルカードとは占いに使うカードだ。 何気なく見ていると、全て欲しくなってしまうが天使系は合わない気がした。天使系ではなくても、いろんな種類がある。私はその中で2つのカードを買ってみた。 一つはタロットカードを元にし...
文字数:約979文字 カラーセラピーにも興味があったので、講座を探してみた。 カラーセラピーにもいろいろな種類の講座があるという事が、調べただけで分かった。 さらに同じ種類の講座でも講師によって、方針が違う。 同じ種類の講座で、同じような場所で2つの講座を見つけた。 ...
文字数:約1126文字 インプロの講座に行ってみた。インプロとは即興演劇の事である。 演劇に興味があったわけではないが、物語と声の役に立たないかと思って行ってみた。 人数は少ないが、ほとんどが顔見知りらしく『常連』が多い事が分かった。 最初は簡単に自己紹介。その後に、簡...
文字数:約914文字 パンの体験講座に行ってみた。 生地をバシバシ 叩 ( たた ) くのが心地よくて、習ってみる事にした。 パン作りは簡単ではないケド、生徒は3人と少人数でサポートも手厚い。 困った時は講師頼みでそれなりに仕上がるので、楽しかった。 一人暮らしの部...
文字数:約976文字 足つぼを習おうと思ったのは、『分かりやすい』からだった。 健康に気を使っているようにみえて、人の役にも立てるようにみえる。 別に健康に興味はないし、人の役に立ちたいわけでもない。 でも、それが『分かりやすい』生きる理由になると思った。 足つぼでは...
文字数:約1380文字 地元の地域おこし協力隊の人にメールをした。 誰かに関わらないといけないという想いからで、別に地域おこし協力隊でなくてもよかったのかもしれない。 ただ『何もないド田舎』に好き好んでくる変わり者には興味があった。 田舎に住んでいる人間から見ると、田...
文字数:約1486文字 休日は秘書検定や簿記検定取得を目指してみたが、そのうち他の講座も受けてみるようになった。 検定は本を買ってほぼ独学で取得した。受かった後の事は考えていない。履歴書にかければいいだろうという程度でしかなかった。 とにかく、『興味があるものを片っ端から...
文字数:約1581文字 Pさんと彼女さんのお部屋で、 呑 ( の ) む事になった。 会長様と最近知り合ったOさんと私の3人で、お部屋にお邪魔した。 最近知り合ったばかりなので、Oさんがどんな人なのかは分からない。 けれど、会長様にお酒を強要していたので、印象は悪かった...
文字数:約1437文字 歌姫が、他の人と音楽ユニットを組んでいた話は聞いていた。 それも一時的で、すぐに解散してしまったらしい。 組んでいた相手のPさんと会った事はなかったが、その時に作ったというCDを 貰 ( もら ) っていた。 歌姫との連絡が途絶え、すっかり忘れ...
文字数:約1309文字 関東に引っ越して、歌姫の路上ライブに行ってみる事にした。歌姫様にも行くと伝えた。 以前に会ってから、一年以上 経 ( た ) っている。 話はブログやメールで近況は聞いていたけれども、それ以上は分からなかった。 「歌姫に久しぶりに会うの」 と、...
文字数:約1263文字 歌姫様と出会ったのは、とあるSNSだった。 毎日の愚痴日記にコメントをくれたのが、歌姫様だった。 落ち込みや恋愛に共感をしてくれて、私は彼女が気になった。 東京に行った時に彼女に会った。 一人で話が出来ないので、会長様を連れて二人の会話を楽...
文字数:約646文字 夢を見た。 愛しの君 ( 会長様 ) の夢。 知らない街並みに、知らない子が私に話しかけていた。 「紹介したい人がいるの」 私は彼女を知らないのだけれども、夢の中では『知っている人』として対応していた。 「誰に会わせたいの?」 「ノアちゃんが知...
文字数:約801文字 「まるで、紫の君だね」 という会長様の言葉で、源氏物語を思い出す。 「源氏物語の?」 「そう」 読書が好きでも、読書家と言うわけではない。 源氏物語も漫画で読んだくらいで、全てのエピソードを覚えているわけではない。 『紫の君』は、光源氏が育てる女の...
文字数:約157文字 「どうして、また会えるって信じられるの?」 会長様がそう聞いた。 「また、なんてないかも知れないじゃない」 私は少し考える。 「うん。また会えるなんてわかんないよ」 考えながら、言葉を区切る。 「わかんないけど、 nabeさんが『またね』って言う...
文字数:約536文字 「私は、どっちでもいけるから」 会長様はそう言っていた。 つまり、同性も異性も愛する事が出来る。 けれど、長く関わるとそれもまた違うと感じた。 会長様は異性を愛する事が正しいと思っているようだった。 「同性愛者だって、本当に愛する異性に会ってい...
文字数:約514文字 妹が東京へ遊びに来たので、会長様に泊めてほしいとお願いした。 けど、前日、用事が出来たから無理と連絡が来た。 それを無理やりお願いして、泊めてもらった。 いろんな意味で、無理をしたなと思う。 一応、妹の前では笑っていたが、お互いに全然笑えていな...
文字数:約908文字 「花火をしたい」と、何気なく言った私の言葉で、「花火をしようか」と言う事になった。 けど、別にそこまで花火をしたいわけでもなければ、こだわっていたわけでもない。 昼間に会って、ふらふらとショッピングモールを二人でうろつく。 オフ会はないので、本当に...
文字数:約855文字 ある日、祭りに誘われた。 プライベートは見せたくないと言っていた会長様の、プライベートな時間だった。 「半分仕事だから、お 喋 ( しゃべ ) り時間があるわけでは、ないけどね」 そう 釘 ( くぎ ) を刺されたが、具体的にどうこうと言う話はない...