✞ 物語の終わりに ✞
文字数:約681文字 この物語を書くずっと前に私は、『×××』という物語を書いた。 傷ついていた私が、傷ついた中で出来たのは物語を書く事。 それが何になるのかと言われても分からないが、私には『書く事』しかなかった。 書いて、傷をえぐって、少し離れて見つめて。 そうし...
文字数:約681文字 この物語を書くずっと前に私は、『×××』という物語を書いた。 傷ついていた私が、傷ついた中で出来たのは物語を書く事。 それが何になるのかと言われても分からないが、私には『書く事』しかなかった。 書いて、傷をえぐって、少し離れて見つめて。 そうし...
文字数:約1720文字 メンタルヘルスの掲示板サイトで、ある人と出会った。 綺麗 ( きれい ) な京言葉を使う人で、ジンさんと言った。 掲示板サイトだが、管理は個人でやっていて管理人が掲示板にも顔を出す。 掲示板に書き込むと管理人が返信をしていた。やがて、常連が数人いる...
文字数:約1693文字 それは、とあるイベントからの帰り道。 東京はどこでも人通りが多い。ただその日は、天気が悪くて若干、人が少なかった。 「すみません」 そんな声をかけてくるのは、大半がキャッチなので、この時も私はそう判断した。 「お時間少し、ありますか?」 話しか...
文字数:約1263文字 女性は、営業トークを続ける。 「ダイエットをするなら、やはり二の腕が気になりますか?それともお腹ですか?セルロースなども気になりますよね」 さらにここから、セルロースとはという説明が入る。私はそれを黙って聞いていた。 そこから女性はとどめとばかり...
文字数:約1240文字 街を歩いていると、声をかけられた。 いつものキャッチだ。地方では歩く事さえ少ないので、キャッチに会う事はないが、東京では時々遭遇する。 急いでいる時は相手にしないが、その時は時間があった。時間があると、構ってしまう。私の悪い癖だ。 「今、お時間よ...
※性行為の表現があります。 文字数:約1619文字 男の部屋に着く。部屋は物が多くて、汚く見えた。 敷きっぱなしの布団が目に入る。どう見ても、『敷きっぱなし』だ。 ロマンチックな雰囲気も何もない事に、 呆 ( あき ) れる。 男の中では勝手な『物語』が仕上がっている...
文字数:約1458文字 悪夢はここからさらに加速する。 「ね。キスしよ」 「無理です」 「恥ずかしがらなくていいよ。恋人なんだしさ」 無理と続けると、「じゃぁ。映画のチケットを買ってこよう」と契約社員さんは諦めた。 私も外に出る。このまま、どこかに行こうかなと思ったが、...
文字数:約1500文字 食事を終えて、お店を出ると真っ暗だった。 「映画はどうする?」 そう聞かれて、そういえば電車の中で映画にも誘われていた事を思い出した。 「もう、帰ります」 「え?行こうよ。せっかく来たんだしさ」 電話での『食事だけ』という話は、消え去っているんだ...
文字数:約1820文字 それは、十二月の事だった。 日雇いのバイトでとある契約社員さんと顔見知りになった。契約社員さんとは部署が違ったが、帰りの路線が一緒だった。 一緒に帰る同じ部署の人たちに混ざって、その契約社員さんがいた。 ある日、同じ部署の人たちが残業で私だけ先...
文字数:約1499文字 「で、何食べる?」 隣人はグラスにお茶を入れてテーブルに置き、デリバリーのメニューをいくつか、私に渡してきた。 「え?お店は?」 「食べに行くの疲れるじゃん。おごるから、デリバリーにしよう」 話がどんどん変わっていくが、私も食べに出るのは面倒だった...
文字数:約1276文字 アパートの隣の部屋に、どんな人がいるのか私は知らなかった。 部署異動になって、私はそれまでとは違う棟での仕事になった。 そこは男性ばかりで、女性は私一人。よくよく話を聞くと「男性が欲しかったけど、女性を回されてしまった」と言う事だった。 その言葉...
文字数:約1035文字 「で、当日はどうする?」 社員さんは一通り自慢をした後に、そう言った。 「え?どうするか分からないです」 私はチケットを手にしているのだし、一人で動く気だった。なぜ、予定をわざわざ社員に伝えなければいけないのか分からなかった。 「どこかで待ち合わ...
文字数:約1113文字 仕事の昼休憩で、私は読書か資格取得の勉強をしていた。 人と話すのが苦手な私は、ずっと休憩時間は読書で過ごした。胸ポケットに本は必須だった。 幸いそんな私を放っておいてくれる人が多く、私は気兼ねなく勉強をした。 やがて、ある社員が声をかけて来た。...
文字数:約1432文字 どう断るべきかなと考える。いや。断ったところで、人の話なんて聞かないだろうけれど。 私がそんな人間を引き寄せている事を嫌でも自覚する。 彼らが見ているのは、『大人しくて自分の言いなりになってくれそうな女』であって、私ではない。 そんな女に告白する...
文字数:約1629文字 派遣先の職場に慣れた頃。 時々、派遣の担当が寮まで送ってくれるようになった。 派遣の寮は、少し離れたところにあって歩いて30分ほどかかった。30分の時間を短縮できるのはとても助かっていた。 その日はたまたま、一人で帰っていた。 いつものように...
文字数:約1492文字 職場でお花見があった。 参加は強制で、不参加は不可能だった。正社員は会社から補助が出るが派遣社員は補助なしで、会費の三千円を自腹で払う事になっていた。 会場も遠くて、飲酒もするので、行き帰りは電車になる。往復で軽く二千円の出費。お花見だけで約五千...
文字数:約1331文字 「えっと。付き合わないから」 「え?付き合おうよ。別に今、付き合っている人はいないんでしょ?」 私は目の前の同級生君をまじまじと見た。 私の中でも、同級生君のイメージがガラガラと崩れていく。かっこいい……とは無縁だが、真面目な人間だと思っていた。 ...
文字数:約1176文字 仕事がなかったころ。 ハローワークに行く途中で、同級生に会った。 「久しぶり」 相手から声をかけられて、振り返ると懐かしい顔だった。 彼は高校の相談室仲間の一人で、中学では生徒会長をしていた事もある。 「何しているの?仕事に行く途中?」 私...
文字数:約1392文字 アイさんを最初に見た時は、 綺麗 ( きれい ) な顔立ちにピアスが印象的だった。 すらりと伸びた背と、ショートカットの髪。少しドキドキしてしまうくらいの美形だった。 彼女は私の指導係で、仕事を教えてくれた。 「ため口でいいよ」 年齢がさほど変わ...
文字数:約1158文字 その職場は同年代が多くて、恋愛話もお互いに聞き合っていた。 私は会長様の事を話していた。恋人としてではなくて、好きな人として話す。 ただ一つだけウソをついた。『彼女』ではなくて『彼』と言っていた。 「でね。彼に抱きつかれちゃって」 「……ねぇ。そ...
文字数:約1148文字 ビアンイベントに参加した。きっかけは、一緒に行ってくれる人を募集しているというのを見たからだった。 その子は一度行った事があり、大体の事が分かっていると言うので、ついて行こうと思った。 成人女性のみのイベントだったので、出入り口で身分確認をされて...
文字数:約842文字 「会いませんか?」 チャットで気が合った相手にそう言ってみた。 相手は子持ちの主婦で時間がないだろうと思ったので、ダメ元での誘いだった。 「うーん。ちょっと無理かな」 予想通りの言葉に「そうですか。残念」と返しながら、全く残念とは思っていなかっ...
文字数:約1238文字 ビアンチャットで知り合ったゼロ君は、自分はFTMだと言った。身体は女性で、心が男性というものである。 ゼロ君は会話が『雑』だった。 全く反応しないよりはマシだが、話していて楽しいと言える相手かと言われると微妙だった。 最初のチャットで、「へー。...
文字数:約1265文字 巴さんの家で、一週間過ごしたが、私の心理面も肉体面もボロボロだった。巴さんの家についた途端に、泣きだしてしまって、巴さんを心配させた。さらに次の日には、微熱が出た。 そして、一週間、私は微熱の身体で過ごした。熱以外は 咳 ( せき ) が出る事も、鼻...
文字数:約960文字 ビアンチャットで、気が合ったのが 巴 ( ともえ ) さんだった。寝る時間を削るくらい話し込んでしまった。 会おうという話をしたのは私の方だった。ただ、私は関東で巴さんは四国、簡単に『会う』というわけにはいかない。 話を振っても、いつも「いつかね」...
文字数:約1115文字 答えながら不安が広がって、出入り口の方を見た。 その時、お店に髪の長い女性が入って来た。 一瞬、それが会長様だとは分からなかった。 スカートに長い髪、ふわりとした女性らしい雰囲気。全てが会長様とは遠いものだった。 手にしたギターで歌いだしたと...
文字数:約1199文字 再び、メールが何回か続いた相手の一人の話。 双 ( そう ) さんはカウンセリングを受けていて、学生だが学校は休学していると言っていた。 かなりカウンセリングの先生に心酔していて、不安定な子なんだなと思った。 その子を誘ったのは、一人で会長様...
文字数:約909文字 ビアンサイトで、お友達募集してみた。 最初はメールでやり取りをする。何人かは、返信が一言で終わる。 『こんにちは。休日は何をしていますか?』 この質問に対して、一言「別に何も」と返ってくる。 他の質問もそんな感じでどうやってこの先を続けたらいいの...